ASDとつま先歩きの関係
自閉症スペクトラム障害児の運動面についてしばしば「つま先歩き」が挙がります。
しかし健常児でもつま先歩きは一定程度は見られます。
自閉症スペクトラム障害による感覚の特異さゆえ、「足の踏みしめ感」に違和感を示しつま先歩きを行うケースは考えられます。
しかし自閉症スペクトラム障害児がみんなつま先歩きをするかと言えば、そこまで多くはないと考えられます。
解説
つま先歩きを行う子供
発達障害、特に自閉症スペクトラム障害(ASD)において、しばしば特徴的な行動として「つま先歩き」が挙がります。
踵を浮かせ、つま先立ちをし、そのまま歩く「つま先歩き」。
こういったつま先歩きを日常の歩行場面で行う。
つまり「『つま先歩き』をしなくていい場面であえて『つま先歩き』をしている」子供がしばしば見られます。
では、実際のところ自閉症スペクトラム障害児にとって「つま先歩き」は特徴的な症状と言えるのでしょうか。
ASD児の運動発達
自閉症スペクトラム障害(ASD)の主な特徴としては、「社会性の障害」「コミュニケーション面の障害」「常同的であったり限局された行動・興味の範囲(こだわり)」といった3つの症状が挙げられます。
つまり、「運動の不器用さ」は自閉症スペクトラム障害を特徴づける症状ではありません。
自閉症スペクトラム障害児は「運動面の偏り・遅れ」や「感覚の特異さ」がしばしば指摘されます。
しかしこれらはあくまで個別の事例や現場での傾向の話であり、「自閉症スペクトラム障害児は運動が不器用である」と断定することはできないでしょう。
運動面の不器用さ
日本自閉症スペクトラム学会の論文に、自閉症スペクトラム障害児者の運動発達について調査したものがあります。
この自閉症スペクトラム障害の子供を養育する保護者へのアンケートによると、運動面の不器用さについて「つま先歩き」はそこまで多い所見ではないことを認めます。
つま先歩きは運動の不器用さにおいて比較的わかりやすい・客観的に判断できる動作であると考えられます。
このため子供がつま先歩きをすると周囲としては印象的ですが、自閉症スペクトラム障害児がつま先歩きをすることは非常に多い事例とは言い難いでしょう。
定型発達におけるつま先歩き
参考資料
是枝喜代治(2014)『ASD(Autistic Spectrum Disorder)児者の初期運動発達の偏りに関する研究 保護者へのアンケート調査を基に』(NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会)2024年12月21日閲覧