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発達障害児の運動の不器用さと二次障害
発達障害あるいは自閉症スペクトラム障害(ASD)児・者は、しばしば運動や日常生活動作において不器用さ・ぎこちなさを呈する場合があります。
運動面の遅れ・偏りは場合によっては運動の苦手さにつながり、二次的な心理的・情緒的問題に発展していく可能性があります。
解説
発達障害児の運動の不器用さ
自閉症スペクトラム障害(ASD)の特徴としては、「社会性の障害」「コミュニケーション面の障害」「常同的であったり限局された行動・興味の範囲(こだわり)」といった症状が挙げられます。
これら3つが自閉症スペクトラム障害を説明する上で主に用いられます。
つまり、「運動の不器用さ」は自閉症スペクトラム障害を特徴づける症状ではありません。
しかしながら、実態として自閉症スペクトラム障害児の運動面の不器用さを感じる当事者は少なくありません。
運動とコミュニケーションの不器用さ
コミュニケーションの苦手さと運動の不器用さが合わさって、自閉症スペクトラム障害児はしばしば集団遊びや複雑なルールの運動が苦手な場合があります。
運動とコミュニケーションの不器用さは、幼少期から学齢期にかけての集団活動の中で顕在化しやすく、二次的な心理的・情緒的問題に発展していく可能性が考えられます。
運動の苦手意識
日本自閉症スペクトラム学会の論文に、自閉症スペクトラム障害児者の運動発達について調査したものがあります。
これによると、運動面の遅れ・偏りを呈する自閉症スペクトラム障害児は、集団での運動や複雑なルールの集団遊びについて苦手意識や心理的負担を感じているケースがしばしば見られます。
また、周囲から馬鹿にされたり責められるといったネガティブなイメージ・経験をしているケースもあるようです。
運動支援の重要性
以上のように、自閉症スペクトラム障害において運動面の遅れ・偏りは主症状ではないものの、運動面の支援は二次的な心理的・情緒的問題の予防に重要であるとが考えられます。
学習支援やコミュニケーション支援だけでなく、運動面の支援も合わせて考えることが重要でしょう。
参考資料
是枝喜代治(2014)『ASD(Autistic Spectrum Disorder)児者の初期運動発達の偏りに関する研究 保護者へのアンケート調査を基に』(NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会)2024年12月21日閲覧