自閉症スペクトラム障害児(ASD)の運動・手先の不器用さの背景
自閉症スペクトラム障害児(ASD)は「身体的不器用さ」や「運動発達の遅れ・偏り」が見られる場合があります。
身体の不器用さの背景には、自閉症スペクトラム障害の主要因でもある中枢神経系の機能障害が影響していると考えられます。
しかしながら、自閉症スペクトラム障害は必ずしも運動発達の不器用さを示すわけではありません。
(そもそも自閉症スペクトラム障害を特徴づける症状に運動発達の遅れは含まれません)
あくまで、「自閉症スペクトラム障害児者は運動発達の遅れ・不器用さを呈するケースがしばしば見られる」という解釈にとどまります。
解説
自閉症スペクトラム障害児の不器用さと感覚
自閉症スペクトラム障害児は体性感覚系の異常さを伴うケースがあり、これにより運動面の不器用さを呈する場合があります。
具体例としては、物を扱う際の不器用さ、転びやすさなどが挙げられます。
また、自閉症スペクトラム障害児は「知的障害」や「発達性協調運動障害」など他の疾患を合併する場合も少なくなく、これらが運動発達に影響を与えている場合もあります。
運動発達の遅れ・偏りの影響の例
運動発達の遅れ・偏りは、その他の認知発達や自尊心などへの影響も考えられます。
運動発達の遅れ・偏りの影響の例としては以下のようなものが考えられます。
- 身体意識を通した自己認知・他者認知への影響(乳幼児期)
- アクティブタッチ(能動的に自身の触覚と運動とを結びつけ、事物などを認識すること)の不足
- 外界に対する働きかけの不足
- 社会性の発達の阻害
- (過度な場合は)生活全般の動作への支障
- (運動への苦手意識から)自尊心の低下
- (不器用さを周囲からからかわれ)集団からの孤立
このため、自閉症スペクトラム障害児の支援において運動面へのアプローチ・配慮は大切と言えるでしょう。
参考資料
是枝喜代治(2014)『ASD(Autistic Spectrum Disorder)児者の初期運動発達の偏りに関する研究 保護者へのアンケート調査を基に』(NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会)2024年12月21日閲覧