前のページ
心の理論におけるチーズケーキ課題
チーズケーキ課題は心の理論における「失言検出課題」に分類されると考えられます。
チーズケーキ課題はネット上で微妙に文言が異なっており、出題の仕方によっては失言検出課題としての意図が不十分になってしまうケースがあります。
以下で、失言検出課題の基本を踏まえた、チーズケーキ課題のより良い出題の仕方を考えます。
解説
チーズケーキ課題の問題文
恵さんの家におじさんが遊びに来ました。
恵さんはお母さんに手伝ってもらって、チーズケーキを作りました。
恵さんは食卓で待つおじさんに言いました。「おじさんのためにケーキを作っているの」。
おじさんは「ケーキは大好きだよ。チーズが入っているのはダメだけどね」と言いました。
ここで質問です。気まずいことを言ったのは誰ですか?
また、なぜ気まずいのでしょうか?
上記がチーズケーキ課題でよくある問題文かと思います。
しかしながら、「気まずいことを言ったのは誰ですか?」のように、気まずいことがあったことを前提にすることは好ましくありません。
失言検出課題は「問題文に失言が含まれているかどうか」も問題の対象です。
つまり「気まずい言動はありますか?」という出題の仕方をしないといけません。
このため「ここで質問です。気まずいことを言った人はいますか?
もしいるとしたら、それは誰でなぜ気まずいのでしょうか?」
といった聞き方をしたほうがより良い問題の出し方であると考えられます。
ちなみに、失言検出課題は類似した問題を複数出すことが望ましいです。
1問だけでは「失言はある」と決め打ちしてしまう人もいるからです。
失言が含まれる問題と、失言が含まれない問題(ダミーの問題)を何問か解いてもらうとより良いでしょう。
チーズケーキ課題に対するツッコミ
チーズケーキ課題について「おじさんはキッチンのチーズケーキにまったく気づいていないのか否か」という議論があります。
気づいていなかったらしょうがないし、気づいていたらおじさんが悪いといった類の議論です。
失言検出課題の意図を汲むと、チーズケーキ課題においておじさんはキッチンのチーズケーキを知らなかったとする設定が妥当です。
これはなぜかと言うと、失言検出課題はそもそも問題文の中の「気まずさ」を読み取る課題で「誰が悪い」と悪者を見つける課題ではないからです。
むしろ「人は悪気がなくても人間関係を気まずくする言動をしてしまうことがある」ということをいかに理解できるかが失言検出課題の本質です。
このため、おじさんはキッチンのチーズケーキの存在を知らず、悪気なくチーズが嫌いだと言ってしまい、それが残念なことに気まずい空気を生んだ。という設定で出題することが妥当です。
失言検出課題は気まずい言動を見つけ、その理由を理解し、それが悪気のない行為であったというところまで導き出せるのがより完璧な正解と言えます。
ただしチーズケーキ課題はキッチンの位置や距離感がわからないため、「おじさんはチーズケーキのことを知っていたのか」ということが文章だけでははっきりわかりません。
こういった観点で言うとチーズケーキ課題はやや曖昧というか構成が甘い部分も否めず、失言検出課題の問題文としてはやや微妙な例題と言えなくありません。