「生まれ」か「育ち」か?
人は様々な遺伝子を持って生まれますが、それが最終的に発現するは環境による場合があります。
遺伝子が人の全てを決めるわけではないですし、環境が全てを決めるわけでもありません。
この遺伝と環境の相互作用が、人間の発達を説明する理論として近年は主流となっています。
解説
遺伝子と環境の相互作用
遺伝学者マリオ・フラガらの一卵性双生児を対象にした研究によると、生活習慣や環境が遺伝子の発現に影響をもたらす可能性がわかっています。
また神経科学者のアブシャロム・カスピらの研究によると、反社会的行動や犯罪率の高さと関連する遺伝子の影響は、虐待を受けるなどの厳しい環境が引き金になることを示唆しています。
その他、孤独が健康に中程度の悪影響をもたらす遺伝子の発現も示唆されています。
このように、近年は遺伝子と環境の相互作用が人間および動物の発達を説明する中心であるという主張が多いです。
環境の影響
環境が遺伝子の発現に影響を与えるという考えは、「遺伝か環境か」「生まれか育ちか」という議論において重要な考え方と言えます。
「遺伝か環境か」「生まれか育ちか」という2択の考え方は昨今の科学ではすたれつつあり、環境と遺伝の相互作用が主流となっています。
遺伝子は様々な種類が影響し合っています。
また、遺伝子を持っていても特定の条件下では一生発現しないパターンもあればその逆もあります。
才能につながるような遺伝子を持っていても、適した環境がなければその遺伝子が発現することはないかもしれません。
逆に(例えば健康上などで)リスクと考えられる遺伝子があっても、適した環境であればその発現を抑えることができるかもしれません。
遺伝と環境の相互作用という考えは教育においても非常に重要な考え方と言えます。
参考資料
ジェームズ・J・ヘックマン(著)、古草 秀子(翻訳)『幼児教育の経済学』東洋経済新報社、2015年