事物全体制約(じぶつぜんたいせいやく)とは?
「事物全体制約」とは、人が新しい言葉を聞いたとき、その言葉はその物全体を指すのだと無意識に感じる現象のことです。
事物全体制約は、子供が言葉を覚えていく際に必要な、生得的に有する認知的制約の1つと考えられています。
解説
事物全体制約の意味
人は新しい言葉を聞いたとき、無意識にその物全体を指す言葉だと考えてしまいます。
新しい言葉を聞けば当然その意味は知りません。
その名前が示すものが物の一部であったり属性(カテゴリー)であったり活動であっても(可能性としては)おかしくないのでしょう。
それでも私達は新しい言葉を聞いたとき、それは事物全体を表すものだとなんとなく予想します。
例えば「キャラメルフラペチーノ」という言葉を初めて聞いてそれを目にしたとき、私達はそれがコップの名前やトッピングの名前、外で飲み物を飲む活動を意味するのではなく、なんとなく「その飲み物を表す言葉」とわかります。
事物全体制約はこのように新しい言葉の意味を効率良く予測することに寄与しています。
事物全体制約の例
子供が言葉を覚えていく上で、事物全体制約は非常に重要な原理の1つと言えます。
例えば「コップ」という言葉を子供が覚えるとき、それが取っ手の部分を指すのか色や形のことを指すのか確認していてはきりがありません。
食事中に「コップ」と聞けば目の前の飲み物が入った物。
散歩中に「犬」と聞けば目の前にいる動物のこと。
そのように初めて聞いた言葉を事物全体に当てはめると理解がスムーズです。
「犬」と聞いて「動物が紐につながれて散歩をしている状態」を指す言葉だとイメージしていては概念が広すぎます。
逆に「動物の足の部分」と考えては逆に概念が狭すぎるでしょう。
「犬」と聞けば「目の前の4本脚の動物」と予想することができれば、「犬」という言葉と対象を素早く結びるけることができます。
言語発達における認知的制約の種類
参考資料
『日本の子どもの初期の語彙発達』(日本言語学会)2023年9月30日閲覧