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個別性のある材質の語彙獲得
個別性のある材質(鉄・プラスチックなど)の名前は、個別性のない材質(水、砂など)の名前と比べて獲得時期が遅いと考えられています。
これは個別性のあるものに対し、人は形に着目しがちであり、それを構成する材質に注目しにくいと考えられるためです。
解説
材質名を答えられる時期
日本発達心理学会の論文によると、4歳児と6歳児では個別性のある材質名を答える課題成績に差が見られたようです。
具体的には、鉄・プラスチック(透明・不透明)・ガラス・木・発泡スチロール・ゴム・スポンジなどです。
「これは何でできているかな?」という問いに対して、上記のような材質は4歳児では難しい場面が見られたようです。
「水」など個別性のない材質に比べて、個別性のある材質は語彙として難しい傾向があると言えるでしょう。
これら個別性のある材質の解答は4歳児と比べると6歳児の正答率は有意に高かったようです。
個別性のある材質の語彙の獲得は、4~6歳にかけて深まっていくと考えられます。
存在論的カテゴリーによる概念的制約の影響
4歳児は個別性のある材質への着目に芽生えはあるものの、その理解度は不十分な面もあります。
存在論的カテゴリーによる概念的制約は、個別性のある材質の語彙獲得を妨げる傾向がありますが、4歳頃からその傾向は軽減されていく可能性があるでしょう。
ちなみに、同じ「個別性のある材質」でも、硬い物(鉄など)より柔らかい物(スポンジなど)のほうが幼児は材質に注目しやすく、語彙獲得しやすいようです。
また、子供は4~8歳にかけて、物と力の物理的な関係について理解が芽生えていくと考えられています。
具体的には、スポンジ・木・鉄など硬さの違う材質を積み上げたとき、下にある材質がどのように変化するかイメージできるようになっていくと考えられています。
参考資料
小林春美(1999)『個別性のある材質名称の獲得の程度と「存在論的カテゴリー」の影響 : 4歳児と6歳児の比較』(一般社団法人 日本発達心理学会)2024年10月19日閲覧