対象カテゴリーの異なる2つの事例を提示する方法
カテゴリーを表す言葉の指導において、対象カテゴリーの異なる2つの事例を提示する方法があります。
これは比較的オーソドックスな指導方法と言えます。
柴犬は「犬」であり、犬は「動物」である。
このように言葉を階層的に理解することは言葉の発達において重要です。
(上記の場合、「犬」は基礎カテゴリー、「動物」は上位カテゴリーと言います)
しかし幼児期はこういった言葉の階層構造の理解が難しい場合があります。
以下、子供にカテゴリーを表す言葉を指導する際のポイントや方法を見ていきます。
解説
課題の概要
2種類の絵(絵カード)にて、基礎カテゴリーと上位カテゴリーの学習を行います。
2種類の絵の一方は基礎カテゴリーの1つの事例、他方は同カテゴリーの別事例を用います。
例として、絵カード①は柴犬の絵で「犬」という言葉を学習します。
絵カード②ではゴールデンレトリバーが描かれた絵で「動物」という言葉を学習します。
方法・手続き
指導者が絵カードに対してカテゴリーを呼称し、それが正しい(〇)か間違っている(×)か答えてもらいます。
机上にて、子供の前に2人の男の子の絵をまず提示します。(仮に一郎君・次郎君とします)
そして「これらか一郎君と次郎君が言ったことがマルかバツか教えてね」などのように教示します。
一郎君の絵の前に「柴犬」のカードを置き、「これは犬です」と指導者が一郎君を演じて言います。
これに対し子供に「〇」か「×」か答えてもらいます。
続いて、次郎君の前に「ゴールデンレトリバー」の絵を置き「これは動物です」と指導者が次郎君を演じて言います。
そして子供に「〇」か「×」か答えてもらいます。
このような形で出題していきます。
課題の意図・位置づけ
上位カテゴリーを学習する上で、異なる事例を用いる方法は、語彙指導におけるテクニックの1つと言えます。
人間には言葉の理解において「相互排他性の原理」というものがあります。
例えば柴犬を「犬」と覚えたとき、人は無意識に「これが犬であるというこは、猫ではない」というように考えることができます。
これは人が言葉を覚える際に役立ちますが、一方で「犬でもあり動物でもある」といった階層構造を理解する際のハードルにもなります。
同一カテゴリーの異なる絵カードを用いることで、こういった相互排他性を緩和して学習することができます。
幼児期の語彙学習として有意義な提示方法の1つと言えるでしょう。
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参考資料
『SITUATED UNDERSTANDING OF HIERARCHICAL CATEGORIES AMONG PRESCHOOL CHILDREN(幼児による階層的カテゴリーの状況的理解)』(日本教育心理学会)2023年5月29日閲覧