胃瘻(いろう)とは?
胃瘻(いろう)とは、手術によってチューブで胃に直接栄養を流しこめるようにする方法のことです。
食べることや飲み込むことの障害である「摂食嚥下障害」などにより、口から栄養を摂ることが困難になった方への対応としてしばしば行われます。
「いろう」は「胃瘻」と書きますが、「瘻」という漢字が一般的には馴染みが薄いため、医療現場でも「胃ろう」と平仮名で書かれることも珍しくありません。
「胃瘻」の経緯と意義
食べることや飲み込むことの障害を「摂食嚥下障害(せっしょくえんげしょうがい)」と言います。
摂食嚥下障害になると、例えば食べ物をうまく飲み込めず誤嚥し、食べ物や水分が肺に入ってしまうことがあります。
肺は空気を吸うための場所ですから、当然ながら食べ物などの異物が入ると炎症を起こす場合があります。
こういして体調が崩れた状態が「誤嚥性肺炎」です。
このように、摂食嚥下障害の場合、
うまく食べることができないゆえの栄養不足のリスクと、誤嚥性肺炎のリスクの2つのリスクがあります。
摂食嚥下障害による栄養不足は食事形態を変えたり補助食などでまずは対応します。
誤嚥性肺炎は抗菌剤などの薬物療法で治療するのが一般的です。
しかしながら、そういった対応も難しく、口か食べることが難しい場合に、「胃瘻」という選択肢が挙がってきます。
「胃瘻」は安全に安定して栄養を供給し、全身状態を改善するという意図があります。
「胃瘻」の実際
「胃瘻」は倫理的な側面から議論の対象になることもしばしばあります。
1つは食べることの楽しみがなくなることへの不安。
もう1つは生きることへの哲学です。
物を食べるという行為は大なり小なり人にとっての楽しみではあります。
胃瘻になっても状態によっては楽しみ程度に食べ物を食べるケースもありますが、
やはり胃瘻によりいよいよ口から食べる(経口摂取)機会が減ってしまうと悩むのは自然な感情でしょう。
また、胃瘻に至る方は、しばしば寝たきりの患者さんもいらっしゃいます。
意識も乏しく、寝たきりの状態で胃から栄養を供給される。
本人にとってそれは楽しいことなのか。そういった家族の葛藤があります。
おわりに
患者さんによっては摂食嚥下障害により、誤嚥性肺炎を繰り返している方もいらっしゃいます。
全員が全員ではないでしょうが、そういった方が胃瘻により栄養が安定して供給され、全身状態が改善するケースも見られます。
なんにせよ、医師と話しつつ本人にとってより良い選択をしていきたいものです。