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自閉症児が心の理論を身につけるのは何歳か?
心の理論の理解を見る課題として、一般的には誤信念課題などがあります。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の子の場合、言語発達年齢が9歳頃になると、誤信念課題を正答することがあります。
感覚ではわかりにくい「空気を読む」や「相手の気持ちを察する」を、理屈や理論でカバーするということについて興味深い示唆であると言えます。
心の理論の理解を見る誤信念課題について、自閉症スペクトラム障害(ASD)は知的に遅れがなくてもしばしばその解答に困難さを示すことが知られています。
もちろん個人差はありますが、
解説
心の理論とは?
心の理論とは、自分や他者の意図・知識・信念・感情といった心的状態を理解したり説明したりする能力のことです。
心の理論の理解は、誤信念課題で見ることが多いです。
誤信念課題とは?
誤信念とは、他者の抱いている誤った信念のことであり、これを正確に推測できるかが誤信念の理解になります。
誤信念課題はいくつかありますが、その中で比較的有名なものの1つにサリーとアン課題というものがあります。
サリーとアン課題とは?
「サリーとアン課題」の概略は以下のようになります。
サリーとアンが部屋で遊んでいます。
サリーはボールをカゴの中に入れて部屋を出ました。
サリーがいない間に、アンがボールを別の箱の中に移します。
サリーが戻ってきてボールを探すとき、どこを探すでしょう?
正解は「かごを探す」になります。
なぜならサリーがボールの移動を見ていないからです。
心の理論が備わっていないと、この問題文を聞いていた自分視点でしか考えられないので、「箱の中を探す。だってボールは箱の中だもん」という解答になってしまいます。
定型発達における心の理論の獲得年齢
定型発達の場合、こういった心の理論はおよそ4歳頃から身につくとされています。
さらに興味深い視点として、誤信念課題おいて子供達は言語化できなくても正答できるケースがあります。
つまり言葉で表現はできなくても「なんとなく」サリーは箱の中を探すとわかるのです。
このことから、心の理論を子供達は理屈ではなく感覚から入って理解していることが推測できます。
自閉症スペクトラム障害児における心の理論
一方で、知的機能にそこまで遅れがなくても自閉症スペクトラム障害児はしばしば誤信念課題が4,5歳頃になっても通過できないことがあります。
しかしながら立命館大学の論文によると、
自閉症スペクトラム障害児の場合、言語性知能において精神年齢が平均で9歳2カ月くらいになると誤信念課題に正解できる場合があるそうです。
自閉症スペクトラム障害児にとって直感ではわかりにくい心の理論を、言語能力を駆使し理屈で理解していることが予想できます。
心の理論から考える自閉症スペクトラム障害児のSST(ソーシャルスキルトレーニング)
「空気を読む」というのはなかなか難しいものです。
空気を読むことが苦手な人に、「言われないでも自分で察して」と言うのはなかなか酷です。
「言葉にしてくれればわかる」「説明してくれれば理解できる」ということは誰しもあります。
しかしそのためには「空気」を「理屈」で考えなければいけません。
例えば心の理論の理解が苦手な自閉症児でも、論理的思考が9歳相当くらいになってくれば、空気を読むことを論理的に理解しやすいかもしれません。
このように、定型発達とASD児の心の理論の獲得は、発達障害児のSST(ソーシャルスキルトレーニング)について興味深い示唆を与えてくれるのではないでしょうか。
補足記事
参考資料
『学童期における認知発達の特徴~9,10歳の発達の節目に焦点を当てて~』(立命館学術成果リポジトリ)2019年1月24日検索