発達障害コラム

カサンドラ症候群とは?~妻と夫のすれ違いと発達障害~

公開日:2019年10月29日


 
 

「カサンドラ症候群」とは?

「カサンドラ症候群」とは、発達障害である配偶者とコミュニケーションがうまくいかず、パートナーが精神的・身体的な負担が生じてしまう状況のことです。

例えばアスペルガー症候群の夫とうまくコミュニケーションがとれず、周囲からも理解が得られず、精神的な負担から体調を崩してしまった妻。

このときの妻の状態を「カサンドラ症候群」と言ったりします。

ちなみに、
「カサンドラ症候群」は正式な医学的診断名ではありません。

あくまで、「こういうケースってしばしばあるよね」という、発達障害の当事者や専門家なら思い当たる「あるあるな状況」を語句にしたものです。

 
 
 

「カサンドラ症候群」が意味するもの

「カサンドラ症候群」の由来

「カサンドラ」とは神話の神様の名前で、予知能力を持ちながらもその予言を誰にも信じてもらえないという呪いをかけられてしまった神様のことです。

カサンドラ症候群は、この神様の名前が由来となっています。

発達障害のパートナーを持つ人の悩みを、周囲が共感しにくいという問題を表しています。

このように、
「カサンドラ症候群」は「パートナーとのすれちがい」と「周囲の無理解」という2つの問題が背景にあります。

 
 

コミュニケーションのすれ違い

カサンドラ症候群が示唆するのは、発達障害者とそのパートナーどっちが悪いというわけではないということです。

カサンドラ症候群は、あくまで互いに理解されない、周囲に共感してもらえないがゆえのその人の孤独感を示唆しています。

カサンドラ症候群と聞くと、どうしても「発達障害のパートナーのせいで負担を背負っている配偶者」というイメージがしばしば独り歩きします。

しかしながら、悪気はないのに非難される発達障害者もまた辛い立場でもあります。

このように、どっちが悪いというわけではなくて、
コミュニケーションのすれ違いと周囲が共感しにくい複雑な状況から生まれるのがカサンドラ症候群です。

 
 
 

「カサンドラ症候群」のエビデンス

「カサンドラ症候群」は正式な医学的診断名ではありません。

医学的な診断についてはDSMやICDといった文献が有名ですが、カサンドラ症候群はいずれにも記載がなく、あくまで俗語の域を出ません。

カサンドラ症候群はあくまで俗語であり、医学的・科学的根拠に基づく用語ではありません。

そのため、医療機関を受診しても「カサンドラ症候群」とカルテに記載されることはないでしょう。

一方で、パートナーや近しい人が発達障害で、コミュニケーションがうまくとれず追い詰められてしまうということは少なくありません。

発達障害の支援は本人だけでなくその周囲の人の支援も含みます。

そういう意味では、カサンドラ症候群は概念としては知っておくと役に立つかもしれません。

 
 
 

おわりに

そもそもカサンドラ症候群はアスペルガー症候群のパートナーに関連したものです。

しかしながら、昨今の医学界ではアスペルガー症候群とその他の発達障害の用語も含めて「自閉症スペクトラム障害(ASD)」と総合することが主流になりつつあります。

こう考えると、
カサンドラ症候群もアスペルガー症候群だけに限った概念ではないかもしれません。

 
 
 

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