発達障害コラム

「学びの格差」という自閉症児の「生きにくさ」

公開日:2017年10月17日

自閉症および発達障害児の教育について考えます。

発達障害児というのはそうでない子と比べると社会の中では少数派になります。

正しいか正しくないかは別として、
今の世の中は少なくとも日本においては民主主義により成り立っており、
民主主義とはつまるところ多数決の世の中です。

多数決の世の中では少数派は多数派に合わせることになり、
発達障害児は社会の中で様々な「生きにくさ」を感じるわけです。

そんな「生きにくさ」の中でその子その子で十人十色の「課題」や「困難さ」が生まれます。
 
 
 

「生きにくさ」の本質

 
自閉症児の約半数は知的障害を伴うと言われています。

ただしこの割合には諸説あって正確な数字はなんとも言えません。
なぜなら知的障害のない自閉症児の場合そもそも医療機関の診察に来ないまま大人になり一生を終えることがあるからです。

話が少しそれましたが、
自閉症児はしばしば知的な遅れにより学校や保育園の生活に支障をきたす場合があるということです。

しかし知的な遅れが自閉症児の「課題」や「困難さ」の本質かと言うと違っていて、
やはり自閉症児の「生きにくさ」の本質は自閉症特有の症状によるものです。
 
 
 

個別の対応

 
自閉症の症状の一つに「こだわりの強さ」「切り替えの弱さ」があります。

場面の変化についていけない。
周囲は何気なく見過ごせる変化がゆるせない。

自閉症の特性はしばしば集団行動に支障をきたします。

学校で言えばスムーズに移動教室ができない。
先生の生徒への一斉の指示に従えない。などです。

これらができないことでその子は「個別の対応」が必要になります。

個別の対応をするということは当然そうでない場合よりも教師の人員が必要になります。

集団行動がとれる生徒が20人いれば教師が一人でも屋外へ社会科見学に行けるかもしれません。

しかし集団行動がとれずマンツーマンの対応が必要な生徒が20人いれば、社会科見学に行くためには20人の教師が必要になります。

では1人と20人の教師を配置するのはどちらが簡単でしょうか?

もちろん20人の教師を配置することのほうがたいへんで、
じゃあ現実はどうかといえば20人の教師は配置できないわけです。
そしてマンツーマンの対応が必要な子はそうでない子より社会科見学に行けるチャンスは減ってしまうわけです。
 
 
 

学びの格差

 
このように、自閉症の症状故にしばしばお子さんは学ぶ機会を充分に獲得できないことがあります。

集団行動がとれないということは個別対応が必要になるということです。
個別対応が必要になるということはそれだけ学ぶためのコストが必要になるということです。

学ぶためのコストが高くなると、そうでない子より学ぶ機会は減ってしまいます。

学ぶ機会が多い子がいろんなことを学ぶ一方で、
学ぶ機会が少ない子は学べばわかることでも学ぶことができず
両者の「学びの格差」はどんどん広がっていきます。

これが発達障害児の「生きにくさ」が生まれていく過程の本質なのではないかと思います
 
 
 

「学ぶチャンス」を増やす

 
発達障害児にとって「学ぶためのコスト」を下げることは非常に大切なことです。

発達障害児が療育施設でソーシャルスキルや集団行動やいろんなスキルを学ぶ理由は「みんなと一緒になること」ではありません。

ソーシャルスキルや集団行動を学ぶ理由は「学ぶチャンス」を増やすためです。
たくさんの経験を積める機会を獲得するためです。
 
 
 
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