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PECSに対する印象
PECSは絵カードを使ったコミュニケーションの支援方法の1つですね。
応用行動分析を基にした、しっかりとした体系のアプローチ方法です。
PECSはコミュニケーションに困難さのある、発達障害児に用いられることが多いです。
しかし公式には、PECSは発達障害児に限らず様々なミュニケーション障害に対応でき、その幅の広さも強みと1つとされています。
そもそもコミュニケーションに困難さがあるということは、他者からの指導や学習が成立しにくいことが考えられます。
そういった現状に対して、
非常に論理的に、段階を踏んでコミュニケーションを指導できるPECSは専門家から重宝されています。
発達障害の支援方法として非常に万能のように思えてくるPECS。
しかし、実際ひいて見てみれば、PECSにもデメリットがあると思います。
今日はPECSの実際について考えます。
PECSとは?
「PECS」は日本語では「絵カード交換式コミュニケーションシステム」と訳されています。
文字通り絵カードを使ってコニュニケーションを促します。
詳しくは以前の記事を参照していただき、今回は割愛します。
PECSのデメリット
家庭に導入するハードルが高い
PECSは良くも悪くも絵カードを使ったコミュニケーション支援の中では体系がかっちりしすぎて個性的な方法と言えます。
リング式のバインダーから、ラミネートした絵カードをマジックテープにより着脱する。
こういった物理的な制限というか条件もあります。
ゆえに、
PECSは家庭での導入に比較的ハードルが高い側面があります。
PECSでコミュニケーションをとろうと思ったら、親や先生、関わる大人もPECSの意味合いの知っておかないといけない。
人とコミュニケーションをとるための方法であるPECSが、療育という「練習の場」でしか使われないということも珍しくありません。
敷居が高いアプローチ法
また、
PECSは研修会の費用が高いというのもネックかなあと思います。
PECSの研修会は参加費が数万円ほどして、なかなかの金額です。
経費で行ける一部の専門職ならまだいいですが、親御さんや当事者が個人で行くとなるとちょっと大変ですね。
専門職がセミナーを受講し、それを親御さんに伝達するという方法も考えられますが、
PECSの商標はピラミッド教育コンサルタントが所有しており、無許可での実践・指導は禁止されています。
つまりPECSを行う・広める人は必ず所定の費用を支払いPECSのセミナーを受けたり資格を取らないといけないわけです。
こういったスタンスを「人材育成がしっかりしている」ととることもできますが、
一方で、
障害を持っている人を支援するための技術が、いささか商業主義に走り過ぎている印象も受けるのではと思います。
エビデンスについて
PECSは心理学の1つである応用行動分析学を用いており、非常に論理的な方法であることは間違いありません。
しかしながら、そのエビデンス(科学的根拠)については一考の余地もあるのではと思います。
PECSについての研究の多くは、少ない症例の中で行われたあくまで「その人に対する効果」です。
どこまで万人に有効かは、判然としない部分もあります。
まあ、障害児に対する研究は往往にして症例数が少なく、この点はPECSに限ったことではないのですが。
いずれにせよ、個別事例で成果はあるものの、大規模な研究は少ないというのが実情かと思います。
また、少し脱線しますが個人的に「?」と思ったところがあります。
PECSのホームページには、「PECSは様々な研究結果が報告されている」といったニュアンスの文言があるのですが、そのページに関してはリンク切れなんですよね。
これは2020年3月時点でホームページを閲覧したときの状態なのでいずれは改善されるかもしれませんが、
エビデンスベースであることを強調しているPECSの公式ホームページが、肝心の研究成果のリンク切れを起こしているのはどうなのかなと。
おわりに
PECSは発達障害児の療育に関してはかなりの存在感を放っており、重要視する専門家も多いです。
そのため、
PECSに対して専門家と保護者で温度差が生じることもあるのかと思います。
具体的には、
専門家は「PECSはすごい」と思っていて、
一方で保護者は「絵カードを作るのが大変」「実生活では使いにくい」と思っているようなパターンです。
あるいは逆で、
保護者は「PECSを使えばうちの子の発達障害は治るんだ」と過信しすぎていて、
専門家としては「うーん、どんな方法も向き不向きがあって、魔法のような指導方法なんてないんだけどなあ」と現実的に考えているパターンです。
このように、
PECSというものはそのかっちりとした管理体系・論理体系から、必要以上に神格化されることもあり、
これがPECSを実際に導入する上での足枷になることも多いのではと思います。
参考資料
『知的財産』(ピラミッド教育コンサルタント)2020年3月28日検索
『PECS®ってなに?』(ピラミッド教育コンサルタント)2020年3月28日検索