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ソーシャルストーリーとは?
「ソーシャル」も「ストーリー」も平易な語句ではあります。
しかしながら発達障害の療育界隈において、
ソーシャルストーリーとはキャロル・グレイ氏が考案した発達障害児に対するソーシャルスキルの支援方法を指すことが多いです。
ソーシャルストーリーは世の中の暗黙のルールやコミュニケーションスキルを平易な文章・読み手の人格を肯定する文体で書いたものです。
ソーシャルストーリーの文章にはいくつかのルールがあります。
以下、みていきます。
ソーシャルストーリーの構成の解説
達成したことを賞賛する文章を5割以上
ソーシャルストーリーは「達成したことを賞賛する文章」を中心に構成されます。
つまり、
「できたことを褒めてもらえるような文章」が「できていないことを指摘するような文章」より多くないといけないのです。
これはソーシャルストーリーがその子の成長(できるようになったこと)の記録でもあるからです。
導入部・主部・結論部での構成
ソーシャルストーリーは、導入部・主部・結論部で構成されます。
導入部は、話題の導入です。
例えば「あいさつ」に関するストーリーなら、
「人と人とが会うと、あいさつをすることがあります」
のような文章です。
主部は、そのストーリーの主な説明部分になります。
例えば「あいさつ」なら、
「知っている人に会ったら、相手を見て笑顔で『こんにちは』と言います」
などです。
結論部はストーリーの締めになります。
例えば「あいさつ」なら、
「あいさつをすると、相手も相手もあいさつをしてくれることが多いです」
5W1H
ソーシャルストーリーは基本的には5W1Hに答える形式をとります。
5W1Hとは、「いつ」「どこで」「だれが」「なにを」「なぜ」「どのように」ということです。
1人称あるいは3人称で書く
ソーシャルストーリーは1人称あるいは3人称で書きます。
2人称は命令系の文章になりやすいので避けます。
1人称とは「私は~」といった形で進む文体です。
3人称とは「人は~」といった俯瞰した形の文体です。
前向きな表現
ソーシャルストーリーには前向きな表現を用います。
例えば「あいさつ」なら、
「知っている人と会ったら何も言わず素通りしてはいけません」ではなく、
「知っている人と会うと、普通『こんにちは』と言います」
といった感じです。
事実文・見解文・協力文・指導文・肯定文・調整文
ソーシャルストーリーの文型には事実文・見解文・協力文・指導文・肯定文・調整文があります。
ソーシャルストーリーは事実文を必ず入れた後、適宜ほかの文型を1つあるいは複数入れます。
たとえば「あいさつ」なら、
事実文は事実を書きます。
「人は、知っている人同士が会うとあいさつをします」
見解文は知っていること・考えていること・感じていることなど
「多くの大人は、知っている人と会ったらあいさつをするよう心がけています」
協力文はそのソーシャルスキルに関して誰が何をサポートしてくれるか。
「先生は、あいさつの練習のときに私にあいさつのタイミングを教えてくれます」
指導文は具体的なソーシャルスキルの内容。
「私も知っている人に会ったらあいさつをしてみようと思います」
※「~します」など断言すると当事者にとって窮屈なので避けます。
肯定文は肯定します。
「あいさつをするときは笑顔であることが多いです。これは素敵なことです」
調整文はストーリーを参考に本人が書き加える部分です。
「学校で先生に会ったときは、あいさつをしようと思います」
2倍以上
ソーシャルストーリーはあくまで本人を肯定的に書く文章です。
そのため、
指導文や調整文の合計より、事実文・見解文・協力文・肯定文の合計が2倍以上になるようにします。
オーダーメイドのもの
発達障害の方は、言葉の裏の意味の理解が苦手な場合があります。
そのためソーシャルストーリーの文章は字義通りの表現を用います。
また、その人の理解力に合わせたオーダーメイドのものであるように努めます。
難しすぎると理解がたいへんですし、
簡単すぎると「馬鹿にされている」と感じてしまうからです。
絵や写真を付け加えることもある
ソーシャルストーリーには絵や写真を付け加えることがあります。
これは視覚的な情報により理解を促すためです。
ただし、絵や写真によってその人の注意が本筋とはずれないように気をつけましょう。
タイトルはルールを網羅
ソーシャルストーリーにおいてタイトルは重要です。
そのためソーシャルストーリーのタイトルは上記のソーシャルストーリーのルールを踏まえた内容にします。
まあ、考え方としては、上記を参考に「肯定的でわかりやすくてシンプルなもの」にしましょう。
例えば「あいさつ」なら「あいさつの仕方」などです。
「あいさつをしなさい」などではダメです。
おわりに
ソーシャルストーリーは発達障害を持つ方の社会技能をサポートするものです。
ソーシャルストーリーは本人の行動を非難したり、健常者の行動を無理強いしたり、「~しなければならない」と義務を提示する類いのものではありません。
ソーシャルストーリーを用いる際は、当事者をストーリーでコントロールしようとしてしまわないように気をつけましょう。
補足記事
参考資料