ピーク・エンドの法則とは「物事の印象はピークと終わり際(エンド)の印象で大部分が決まる」という法則です。
例えばあるデートの場面です。
はじめ、彼はデートに10分遅刻してしまいました。
まずは二人は映画を見ます。おもしろそうな映画でしたが、実際は退屈で彼女は「この映画はずれだな」と思いました。
二人はその後レストランに行きます。今日は彼女の誕生日。彼はサプライズでケーキを準備してくれていました。彼女はとても嬉しい気持ちです。
食事が終わってそろそろ帰る時間。彼女はもっと彼といたい気持ちでした。けれど明日は二人とも仕事。彼女は少し名残惜しいですが電車に乗って帰ります。
彼女にとって、今回のデートはとても楽しいものだったでしょう。
彼は遅刻してきたし、映画はつまらないものでしたが、誕生日のサプライズというピークと、もっと彼といたいという気持ちのまま帰るという終わり際(エンド)の気持ちから「デートは非常に楽しかった」という印象を持ちます。
前半の好ましくない記憶よりピークや後半の好ましい記憶のほうが強く残っているのです。
物事の印象というのは、始めから終わりまでの印象を合計して総合的に判断するわけではありません。
ピークと終わり際の印象が全体を通しての印象となります。
まさに「終わりよければ全てよし」といったところです。
相手に良い印象を持ってもらうためにはどうしたらいいでしょう?
ピーク・エンドの法則から考えると、ピークと終わり際に力を注ぐのがコミュニケーションのコツであることがわかります。
コミュニケーションや会話の前半は無難でつまらなくてもいいのです。
中盤から後半にかけてどっと話が盛り上がるようなピークをもってきます。
そしてダラダラと惰性のやりとりになる前にさっと切り上げてしまう。
楽しい雰囲気だからといって「もっともっと」と時間を延ばしてダラダラとなってしまったら、そのときに場を終わるのはもう遅いのです。
ピーク・エンドの法則は一つの盛り上がりが全体を印象付けます。これは逆のパターンもあり得ます。
つまり相手をとても傷つけてしまったり不快にさせたりしてしまうと、それ以外の時間がそこそこ楽しかったとしても台無しになってしまうのです。
このことからも、当たり外れが多いコミュニケーションをするより、基本は無難で盛り上がりが一点あるようなコミュニケーションのとりかたが有効であることがわかります。
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相手とコミュニケーションをとるとき、「始めから終わりまでずっと盛り上がらないといけない」と思うのは間違いです。
中盤から後半に相手の印象に残る「楽しい時間」をひとつ作ればいいのです。
そして相手が「もっとあなたと話したい」と思っていてくれているうちにさっと終わるのです。
足るを知ることが重要なのです。