SST(ソーシャルスキルトレーニング)において社交辞令の理解は重要項目の一つでしょう。
そしてSSTの中でも社交辞令の理解は難しい項目の一つです。
【社交辞令の7つ原則】
社交辞令を理解するためにはいくつかの原則を知っておく必要があります。
・言っていることと本心が違う
・社交辞令は対人関係を円滑にしたい意図がある
・種類としては「遠慮型」と「社交型」がある
・「遠回し表現」「不可抗力表現」「無責任表現」がある
・簡単なものから複雑なものまで様々で程度も様々
・たまに社交辞令と思われることが本心であったりする
・真剣にならなくていいし、真剣に追求しなくていい。それは逆効果
【言っていることと本心が違う】
まず原則として言っていることと本心が違います。
その人は伝え方が下手でも途中から心変わりしたわけでもありません。
最初からはっきり本音があった上でそれとは違うことを言っているのです。
少しドライな言い方をすれば、社交辞令とは嘘のことです。
本音を隠したいし嘘をついたと思われたくもないので、わかりにくくしてついた嘘です。
【社交辞令は対人関係を円滑にしたい意図がある】
では社交辞令という嘘は悪いことなのでしょうか?
そうとも言い切れません。
社交辞令を言うということは、
人間関係を円滑に保ちたいという気持ちの表れです。
相手が悪なのではありません。
もしも社交辞令を言われたら、少なくとも相手はあなたと人間関係のトラブルは避けたいのです。
社交辞令を言われるということは、
相手はあなたに嫌われたくないのです。
相手はあなたとのトラブルを避けたいのです。
あるいはあなたとトラブルになることで別の誰かに嫌われたくないのです。
あなたは相手と本音で言い合える人間関係を築けていないのです。
あなたは相手にとって魅力が足りないのかもしれません。
社交辞令を理解できないから社交辞令を言われるのです。
【種類としては「遠慮型」と「社交型」がある】
社交辞令の種類は主に「遠慮型」と「社交型」があります。
<遠慮型>
遠慮しているような言動です。
主に誘いを断ったり否定したりするときに使います。
(遊びに誘われて)「いえ、お忙しいでしょうしなんだか悪いので・・・」
<社交型>
遠慮型が防御の社交辞令に対し、社交型は攻めの社交辞令です。
「今後飲みに行きましょう」(行くつもりがない)
「いつでも電話してください」(しても出るつもりはない)
【「遠回し表現」「不可抗力表現」「無責任表現」がある】
社交辞令の具体的なフレーズとしては「遠回し表現」「不可抗力表現」「無責任表現」があります。
<遠回し表現>
表現を遠回しに言うことで本音をダイレクトに言うことを避けます。
(例)「食べた食事がまずい」→「個性的な味ですね」
<不可抗力表現>
あくまでその言動が不可抗力であり、自分に非はないという言い方
(例)「飲み会にいきたくない」→「今日は妻が少し体調が悪いので・・・」
<無責任表現>
本音を言うと角が立つので無責任は発言でその場を収めます。
(例)「この人と付き合いたくないな」→「○○さんには素敵な人が見つかるよ」
(例)「楽しくなかったと思われたくない」→「また誘って下さい!」
【簡単なものから複雑なものまで様々で程度も様々】
社交辞令はすぐにわかるものもありますが、非常にわかりにくいものもあります。そして程度も様々です。
「前向きに検討します」(実際検討するつもりはない)といった露骨な社交辞令もある一方で、
まずいわけではない普通の料理を「おいしい」と言うなど程度が微妙な社交辞令もあります。
【たまに社交辞令と思われることが本心であったりする】
これが社交辞令が最も難しい点です。
人は社交辞令と思われることがごく稀に本心であったりするのです。
「今後飲みに行きましょう」は一般的に社交辞令としてよくあるフレーズですが、人によっては本心だったりします。また同じ人でも時期によって社交辞令の時もあれば本心だったりします。
【真剣にならなくていいし、真剣に追求しなくていい。それは逆効果】
社交辞令について一番大切なのはこれです。
真剣にならなくていいし、真剣に追求しなくていいのです。
真に受けなくていいのです。
「今度飲みに行きましょう」「そのうち遊びましょう」の「今度」や「そのうち」は忘れるくらいでいいのです。
そして社交辞令の追求をしてはいけません。
「今度飲みに行くって言ったじゃないですか!」なんて間違っても言ってはいけません。
社交辞令を追求してそれが実現しても、絶対相手は乗り気ではないしお互いの人間関係が良い方向に発展することはありません。
【最後に:社交辞令って悪いこと?】
先述した通り、社交辞令は人間関係を円滑に進めたいという気持ちの表れです。
嘘は基本的にはいけないことです。
しかし社交辞令は相手を傷つけようとしてついた嘘ではありません。
私達は非常に複雑な人間関係の世の中で生きています。
しかしその複雑さは人が自分や相手を大切にしたいという気持ちの表れからきているのです。
重複しますが、社交辞令を理解できない人ほど社交辞令を言われます。
社交辞令はあなたと相手の人間関係の現状を示すバロメーターです。
あなた一人が社交辞令が苦手でも、世の中から社交辞令はなくなりません。
どうせなら社交辞令を活用しましょう。
あなたの人間関係のバロメーターとして。