1. 終業5分前に帰る新入社員
知り合いの会社に、終業5分前に帰る新入社員がいました。
世の中にはいろんな仕事があって、仕事の時間も様々です。
けれど多くの会社の場合、仕事の基準が「時間」になっているところは多いです。
つまり始業時間と終業時間があるわけです。
良いか悪いかは別として、
日本はサービス残業が多い国なので、
終業時間を過ぎても仕事をしている人は多いです。
しかし、一般的に、終業時間より前に帰る人はいません。
まあ、場合によっては自営業などは異なるかもしれませんが。
2. 場が凍りつく、終業5分前
知り合いの会社はご多分に漏れず始業時間と終業時間のある会社でした。
残業はないわけではありませんが、
昨今問題になっているブラック企業と比べればまあ少ない方かなというのが知人を感想でした。
そのため、人によっては、日によっては、終業後すぐに帰る人もいました。
知人の会社は比較的寛容な人間関係ではありました。
そんな知人の会社に入社したのは、真面目そうな新社会人の女性でした。
言葉遣いも礼儀正しく、直属の部下ではなかったものの、知人も多くの社員と同様に彼女の第一印象は良かったです。
ものすごく器用なわけではないですが、教えられた仕事は真面目に取り組んでいました。
最初の1カ月ちょっとは仕事を教えてもらうことが主でした。
2,3か月すると自分の受け持った仕事を自分のペースで取り組む機会が出てきました。
思考錯誤しつつ、少しずつ会社の業務に慣れてきた様子でした。
ある日、彼女は作業がはかどったようでその日の仕事がひと段落したようです。
終業10分前ほどのことでした。
彼女はパソコンの電源を消したり簡単な片付けをした後で、
「お先に失礼します」と自然に帰りました。
終業時間5分前のことでした。
周囲の空気が一瞬凍りつきました。
でも彼女があまりも、当たり前のように帰っていったので誰も彼女に声をかけることができませんでした。
3. 労働時間の暗黙のルール
後日、似たようなことがもう1回ありました。
その後、直属の上司が優しめに指摘すると彼女は慌てた様子で謝ったそうです。
実際、彼女が終業時間よりも早く帰ることはなくなりました。
良いか悪いか、多くの会社員は始業時間より早めに来て仕事をします。
そして終業時間が過ぎても残業をします。
でも、始業時間よりちょっとでも遅れたら遅刻ですし、終業時間より早く帰るなら早退になります。
彼女は、
労働時間が長くなる事に関しては会社は黙認するけれど、労働時間が短くなることに関しては非常に厳密であるという暗黙のルールを知らなかったわけですね。
「仕事が仮に早く終わっても、勝手に終業時間より早く帰ってはいけない」というのは多くの人が知っています。
でも、確かに、それを学校で明確に教わったかと言えばそうでもない。
彼女は別に仕事にやる気がなかったわけでも規則を破ろうとしたわけでもなかったのです。
単に、社会の暗黙のルールを知らなかったのです。
4. おわりに
人はそれぞれ違った考えや感じ方をします。
ある人にとっては「そんなの当たり前だろ」と思うことが、別の人には全く共感できなかったりします。
幼稚園や保育園。小学校、中学校、高校、大学。
人は人生の始めのほうははお金を払って学びに行きます。
しかし大人になると逆になります。
つまり自分が何かをしてその対価としてお金をもらうわけです。
この「学校」と「会社」という似ているようでまったく違う環境で、たくさんの暗黙のルールを人は学びます。
そしてこの「学校」と「会社」という大きな変化に、うまく対応できなことがあります。
終業時間を過ぎてから帰るというのは、ある人にとっては誰かに教えられるわけでもなく当然のことと思っているかもしれません。
でも彼女にとっては、改めて指摘されないと気付けない物事だったわけです。