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福岡市の療育施設の長期手続き常態化の件
福岡市の療育施設の空きがなく、療育開始まで4か月ほど時間を要すことが西日本新聞にてニュースになりました。
しかし「療育施設の空きのなさ」については、他の地域(都道府県)にも多かれ少なかれあるのではと思います。
この「療育施設の空きのなさ」について考えていきます。
療育施設の不足に関する考え
発達障害児は増えているのか
発達障害児の療育のニーズが高まっている昨今。
少子化によって子供の数が減っているにも関わらず、療育を受ける発達障害児は増えています。
個人的には、近年になって急に発達障害を持つ子供が生まれてくる人数が増えたわけではないと考えます。
「発達障害」という言葉が社会的に認知・理解されてきたという背景が、療育を受ける発達障害児の人数の増加に関わっていると考えます。
療育施設が不足している理由
療育を受けたい発達障害児に対して、療育施設の数が不足しているのが今の現状です。
しかしこれは療育を受けたい発達障害児が急増しているということだけが問題ではない気がします。
また、ハード面(療育施設)や人材面(専門家)の不足だけの問題でもない気がします。
療育施設が不足している背景には、療育施設を回していくシステムの効率の悪さがあるのではと考えます。
「入」と「出」の問題
西日本新聞によると、福岡市は療育に関する手続きを市の指定医が行う独自のシステムを採用しています。
これが手続きを集中させ結果として当事者に「待ち」の状況を作っています。
これは発達障害児を受け入れる窓口の効率の悪さ、つまり「入り」の問題と考えられます。
また、記事によると、福岡市がこのような仕組みを取っているのは、未就学児の発達障害児の診断は専門家でも難しいという背景を汲んでとのことです。
つまり「入り」の問題には、外見には見えにく発達障害というものをどう診断し受け入れるかという問題もはらんでいるということになります。
また、発達障害の療育は明確な終わりの基準がありません。
幼稚園であれば年長さんで卒園、小学校であれば6年生で卒業です。
これに対し発達障害児の療育に明確な終わりはないため、施設はそれぞれの基準で終わりを設けます。
これにより、療育施設ではまだ療育を受けたいのに療育が終了する「切られた」状態や、逆に療育を長期で受けるがゆえに療育施設が新規の子供を取れない状態が発生したりします。
このように、発達障害児の療育は現状、「入り」の問題だけではなく、どう療育を卒業していくかという「出」の問題もあります。
このような「入り」と「出」の効率の悪さが、療育施設やそこにいる専門家といった社会資源を活かしきれていない現状を招いているのではと思います。
参考資料
『療育施設に通えず、空白の4カ月 福岡市で長期手続き常態化』(西日本新聞)2021年3月20日検索