友達に無視された被害者(中学生)の事例
思春期のいじめにおける心理的要因として、「他者に左右されやすい自己認識」や「友達集団への依存」などが挙げられます。
以下、事例を踏まえ見ていきます。
いじめの事例と解説
いじめの事例
中学の時に、無視されそうになった。いじめとまではいかなかったけど。友達から、「喋る言葉がきつい、それで時々すごい傷つくことあるんだわね」と集中攻撃された。そして、「喋りたくなくなる」とまで言われた。私は、自分の話し方を否定された、普通にしてるのに否定されたところがあったから、何も喋りたくなくなった。内にこもっていった。そんな私を、他の友達が救ってくれた。「何かあったの?」と聞いてくれて、事情を話したら、その子は、「私はそうは(喋り方がきついとは)思わない」と言ってくれた。それで救われた。救ってくれた子とは、笑顔で話せた。しかし、「言葉がきつい」と攻撃してきた友達とは、あまり話をしなかった。彼女たちは、私が喋らなくなっ たことにむかつくのか、「あの子とは喋るのに、どうして、私たちには喋ってくれないの」と言ってきた。結局、彼女たちとは、卒業まであまり話さなくなった。友達に、「喋りたくなくなる」と言われたとき、もう喋ってもらえなくなってしまうと思った。もし無視がそのグループの中だけで始まったとしても、絶対クラスに広まっていくと思った。皆は、無視されてる子じゃなくて、無視してる子の方に「どうして無視してるの」って聞くから、無視が広まっていくと思った。とても怖いことだと思った。でも、「何かあったの」と私に聞いてくれた子がいたから、救われた。
丸山真名美(1999)「思春期の心理的特徴と「いじめ」の関係」より引用
解説
上記の事例は「無視」に加え具体的な非難が伴っているいじめと言えます。
「無視」と聞くと何も具体的なことは言われない状況を想像する人もいるでしょうが、このように理由付けを行われた上で無視されるケースもあります。
この事例の場合、被害者は理解を示してくれる友人に恵まれたためそちらのほうで人間関係を築くことができます。
しかし無視がクラスに広まるのではないかという不安は付きまといます。
「無視されている子にではなく、無視している子に理由を聞く」というのは興味深い実態と言えるでしょう。
いじめの事例集と解説
参考資料
丸山真名美(1999)『思春期の心理的特徴と「いじめ」の関係』(心理科学研究会)2024年3月8日閲覧
楠凡之(1997)『少年期のいじめ問題の発生機序と教育指導 : 自我・社会性発達の観点から』(心理科学研究会)2024年4月28日閲覧