頸部聴診法の評価方法
摂食嚥下障害のスクリーニングとしての頸部聴診法は、「嚥下音」と「呼吸音」をそれぞれ聴きます。
呼吸音に関してはその人の平常時のクリアな呼吸音を把握しておきます。
呼吸音は平常時と嚥下後の比較も重要ですので、その人のクリアな呼吸音を把握することが正確な評価につながります。
判定基準(異常音から疑われる嚥下障害)
嚥下音
- 長い嚥下音、弱い嚥下音、複数回の嚥下音
→舌による送り込み障害
咽頭収縮の減弱
喉頭挙上障害
食道流入部の弛緩障害 など - 泡立ち音
→誤嚥 - むせに伴う喀出音
→誤嚥 - 嚥下音の合間の呼吸音
→呼吸・嚥下パターンの失調
喉頭侵入
誤嚥
聴診の際は指示下で嚥下してもらうのが望ましいです。
ただし指示理解が困難な場合は自由嚥下でも評価可能です。
呼吸音
- 湿性音、嗽音、液体振動音
→誤嚥や喉頭侵入
咽頭部における液体貯留 - むせに伴う嗽出音、喘鳴様呼吸音
→誤嚥
呼吸音に関しても指示下での呼吸音が基本になります。
指示が通らない対象者の場合はこの限りではありません。
嚥下評価の伴う聴診のため、
呼吸音の聴診は貯留物の排出行為が行われる前に行います。
当たり前ではありますが、嚥下障害により貯留物があるのにそれを排出させたあとでは、嚥下障害の状態の評価ができません。
おわりに
摂食嚥下障害における頸部聴診法では、嚥下音と呼吸音に着目して評価を行います。
嚥下音に関してはその長さや回数に着目します。
また嚥下音・呼吸音どちらについても、嚥下障害の伴う音の湿り気やひっかかりに気をつけます。
ちなみに、
頸部聴診法は検査者の耳、患者さんの首に直接触れるものですから、聴診器の衛生面にも配慮しましょう。
特に重度の嚥下障害で流涎があったり、咳嗽がある方の評価を行う場合は流涎や飛沫に聴診器が触れることも十分考えられます。
摂食嚥下障害の評価
参考資料
『摂食嚥下障害の評価 2019』(日本摂食嚥下リハビリテーション学会)2020年8月3日検索