赤ちゃんと大人では物の見え方、つまり視覚が異なることはなんとなく想像がつきます。
では具体的にはどんな感じでしょう?
今日は人間の視覚の発達についてです。
視力の発達
小児分野の医学博士である常石秀市氏の論文を参考にすると、
新生児の視力は0.03~0.05であり、生後6カ月頃には0.2くらいです。
徐々に視力は発達し3歳頃には視力1.0に達します。
ただしそのほかの文献や情報を参考にすると
だいたい3~5歳頃に視力が1.0、つまり大人と同等の視力に至るようです。
ちなみに文部科学省の平成29年度の調査によると、
裸眼視力が1.0以上あるお子さんの割合は
幼稚園:75.13%
小学校:66.80%
中学校:42.72%
高校:36.07%
となっています。
立体視
視覚の発達とは視力だけではないでしょう。
例えば立体視。
人が生きていく上で物を立体的に捉えることは非常に重要です。
小児科専門医の小枝達也氏の論文によると、視覚の中で立体視のみの能力だけ評価することは難しいですが、1歳児は床の段差に配慮しながら歩けることから少なくとも1歳頃にはすでに立体視の能力が備わっていることを示唆します。
ちなみに、同氏によると
斜視の手術が必要なお子さんに対して、立体視の正常な獲得のためにも3~4歳頃までに手術を済ませておくことを推奨しています。
斜視とは左右の目の視線の方向がずれている状態です。
色覚認知
視覚機能において色の認識も重要ですね。つまり色覚認知。
視力と異なり色覚は比較的早期に身につき始めます。
概ね生後4カ月頃には大人と同じ色彩感覚が身につくと言われています。
ちなみに色盲など視覚にそもそも特殊性がある場合はまた別の話。
文字を読む力
視覚機能の発達において物の形の認識する力も重要になってきます。
「物の形を認識する力」が、先々の「文字を読む力」につながるわけです。
正常発達における形の認識は、
2歳頃に丸・三角・四角といったごく簡単な形の認識。
3歳頃に上記に加え六角形などいろんな多角形の認識。
4歳頃に文字になんとなく興味を持ち始め
5歳頃に平仮名が読めるようになっていきます。
ちなみに形の認識とは、三角と四角の違いがわかることです。
三角を見て「さんかく」と名前が言えることではありません。それは言葉の力も関わってきますからね。
読み書きの発達過程についての詳しいことは以下をご参照。
補足記事:幼児の読み書きの発達~親が子供に教えたら有意義なこと~
まとめ
以上のように、
だいたい5歳頃になると大人の視覚機能に近づいてきます。
しかしながら人間の発達には複雑な要素が関わります。
発達途上であるが故の視野の狭さや見いていても体を上手く使えないことなどまだまだ成長の余地がある時期です。
一緒に道路沿いを歩くときなどは、特に注意してあげましょう。
参考資料
常石秀市『感覚器の成長・発達』(J-STAGE)2018年2月3日検索
『学校保健統計調査-平成29年度(確定値)の結果の概要 2.調査結果の概要』(文部科学省)2018年11月15日検索
小枝達也『ヒトの視覚の発達と発達心理学』(J-STAGE)2018年2月3日検索
『知ってる?色覚も視野も大人と全く違う!子どもの世界の見え方とは』(保育のお仕事)2018年2月3日検索