ADHDの年齢変化
ADHDは子供の頃は多動性や衝動性が目立ち、大人になると不注意の側面が目立つ傾向があります。
これは成人になるにつれADHDの症状のうち多動性と衝動性が比して減弱する傾向にあるためです。
ただしこれらの研究は横断的調査を含むので、ADHDの誰もが大人になると多動性・衝動性が落ち着くわけではありません。
解説
ADHD-RSの研究
ADHDの症状を客観的に評価する方法の1つに、質問紙形式であるADHD評価スケール(ADHD-RS)があります。
ADHD評価スケールのデータによると、
教師の評価においては
5~10歳で
混合型 > 不注意優勢型 > 多動性-衝動性優勢型
11~18歳で
不注意優勢型 > 混合型 > 多動性-衝動性優勢型
となっています。
また親の評価では
5~7歳で
多動性-衝動性優勢型 > 混合型、不注意優勢型
8歳以上で多動性-衝動性優勢型が減少し不注意型が目立つようになっていきます。
ADHDの経過
ADHDは不注意・多動性・衝動性の3つの症状からなります。
そしてこれらの症状は年齢を重ねる中で変化していくという考えもあります。
この背景には脳の成熟、社会的能力の向上などが関係していると考えられています。
脳が成熟し、また社会経験を積む中で、不注意・多動性・衝動性いずれの症状も少なからず減弱していく場合があります。
減弱した症状により子供の頃は診断に至っても大人になると診断を満たさなくなるケースももあります。
実際ADHDは学童期と比べると成人期の有病率が大きく低下しています。
学童期の場合、有病率は5%前後であるのに対し、成人期は2~2.5%ほどと考えられています。
特に症状の減弱は多動性と衝動性に見られ、学童期では男児に多かったADHDの有病率も成人期ではほぼ1:1で男女差がなくなります。
参考資料
『注意欠如・多動症 (ADHD) 特性の理解』(一般社団法人 日本心身医学会)2022年11月19日閲覧
『ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療』(厚生労働省「e-ヘルスネット)2022年11月19日閲覧