心に余裕がないと先を見通すことはできない
心に余裕がないと冷静に広い視野で先を見通すことは難しいです。
例えば時間などが欠乏し冷静でない状態だと、計画表や予告を提示されてもそれを活かしきれないことがわかっています。
研究
予告動画の実験
行動経済学者のセンディム・ムッライナタン氏らによる、人の欠乏の心理に関する実験があります。
被験者は簡易なゲームをやってもらいますが、1ラウンドのプレイ時間が長い(余裕がある)グループと短い(余裕がない)グループに分けられます。
さらに各グループの半数には、次のラウンドの参考になる予告が提示されます。
プレイ時間の長さ、つまり心の余裕と予告の活用の様子に関する実験です。
結果
実験の結果、プレイ時間が短いグループは予告を提示しても成績が変わりませんでした。
心の余裕が、予告に意識を向けられる度合いに影響を与えたと言えるでしょう。
プレイ時間に余裕があるグループや予告を提示されるとそれを次のラウンドに活かすため、予告がなかった被験者よりも成績が向上しました。
一方でプレイ時間に余裕がないグループは、予告を提示されてもされなくても成績が変わりませんでした。今のラウンドのプレイに集中しないといけないため、予告で次のラウンドを想定するということに意識が向かなかったと考えられます。
解説
精神状態によって先を見通す力が変わることは、当たり前のように思えます。
しかしそこをさらに掘り下げて、心の余裕があるか否かで、同じ情報量でもそれを活かせる力が変わることは興味深く大切な教訓だと思います。
世の中には意外と事前に告知・予告されていることは多いです。
確定申告の手続きや公共施設・サービスのスケジュール。お店の定休・改装日や映画の公開時期。
しかし多くの場合、私達はそういった暮らしの中の「予告」を流し気味で、あとになって締め切りに追われることが少なくありません。
時間や金銭、スケジュールに余裕を持つことは、今からの計画に関する情報のアンテナも広げてくれると言えます。
参考資料
センディル・ ムッライナタン、エルダー・ シャフィール『いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学』早川書房、2015年 p161