いじめといじりの境界線があいまいな事例
思春期のいじめにおける心理的要因として、「友達集団への依存」などが挙げられます。
以下、事例を踏まえ見ていきます。
いじめの事例と解説
いじめの事例
中学3年の時、いじめかどうか分からないけれど、ある子が他の子をからかい始めた。仲がいい2人の女の子がいて、その1人が、愛情表現のつもりで、もう一方の子をからかい始めた。「かわいい、あたまがいい」と言って。からかわれている方も、仲がいいから愛情表現だって分かるんです。2人の間では納得できていた。だけど、からかってる方の女の子は、クラスの中で結構強かったから、他の子も彼女の方についてしまう。だから、いじめのように見えてしまう。からかわれている子は、からかっている子より頭が良くて何でもできたから、いじめられてるなんて思ってなかったと思う。でも、皆にからかわれたり、冗談で仲間外れにされると、彼女は泣いてたし、他のクラスの子は、それをいじめだと思ってた。(集団ではなく)2人だけで話したりする時は、(からかうことなく)普通に接することができた。(それに、彼女は)、頭もいいし、何でもできたから尊敬してたのに、集団になるとからかってしまった。からかいは卒業まで続いたけれど、彼女(からかわれた子)とも、卒業してからも仲いいし、あれは一体何だったんだろうと思う。集団になると、からかってしまった。皆で話してるところに、彼女が来ると入れないようにしたり、彼女も「入れてよ、入れてよっ。」としたし、いじめだと感じてたらそういうふうにはしないと思う。結局、いつもグループで行動してた。
丸山真名美(1999)「思春期の心理的特徴と「いじめ」の関係」より引用
解説
よく「いじめ」と「いじり」の境界線の難しさが指摘されますが、この事例もいじり(からかい)としつつ実質はいじめであった事例と言えるでしょう。
この事例では女の子はいじめやからかいを受けても、その友達グループに居続けています。
思春期の子供達が友達集団をいかに重要視しているかがわかる例と言えるでしょう。
つまり、多少嫌な目に遭っても、友達の集団から外れる(孤立する)よりはマシであるという感覚です。
また、この女の子をからかう生徒は元々の中の良かった友人だけにとどまりません。他の生徒もからかいを真似しだします。
集団の中で同じような行為をすることで、集団内の結束を無意識に高めようとしているのかもしれません。
これは一対一の関係でいじめが発生しなくても、集団になるといじめが発生する要因になっていると考えられます。
いじめの事例集と解説
参考資料
丸山真名美(1999)『思春期の心理的特徴と「いじめ」の関係』(心理科学研究会)2024年3月8日閲覧
楠凡之(1997)『少年期のいじめ問題の発生機序と教育指導 : 自我・社会性発達の観点から』(心理科学研究会)2024年4月28日閲覧