発達障害児が九九を覚えられない理由
発達障害児はしばしば九九を覚えることに困難さを示す場合があります。
発達障害児全員が必ず九九が苦手というわけではありませんが、障害特性から一般的な九九の学習では「その子に合わない」場合もあります。
以下、発達障害の背景から考えられる九九の難しさを見ていきます。
解説
自閉症スペクトラム障害(ASD)
自閉症スペクトラム障害(ASD)の特徴として、「2つの物事(情報)を同時に処理することの苦手さ」が挙げられます。
これは知的な面の高い・低いにかかわらず比較的見られる傾向です。
九九の学習は同時処理的な作業が伴います。
九九の表を見ながら唱える、九九を言いながら書くなど暗記の際に伴う同時作業はしばしば自閉症スペクトラム障害の子を混乱させるかもしれません。
学習障害(LD)
読み書きに弱さを持つ学習障害(LD)児は音韻の弱さを抱えている場合が多く、これが九九の学習の困難さにつながっている場合があります。
音韻の弱さとは、言葉の音を認識する力の苦手さです。
音韻の弱さがあると例えば初めて聞く単語を正確に復唱したり文字に書き起こしたりすることが苦手かもしれません。
あるいは逆さ言葉やしりとりといった言葉の音を活かした遊びが苦手かもしれません。
九九の場合は「7×7(しちしち)」と「4×7(ししち)」など音が似ている掛け算を混同しやすく、覚えることに苦戦する可能性が考えられます。
注意欠如多動性障害(ADHD)
注意欠如多動性障害(ADHD)児は、注意の弱さから音の聞き間違い・問題の見間違いが起こりそれが九九に苦手さにつながるかもしれません。
集中できないのにたくさんの練習量を強いられるなどで九九に対するネガティブな印象を持ってしまうリスクも考えられます。
参考資料
『九九学習で誤答率の高い九九の要因と特異数』(一般社団法人 日本LD学会)2021年12月16日閲覧
『算数障害を有する児童に対する九九の自動化のための学習支援』(上越教育大学)2021年12月16日閲覧
『通常の学級に在籍する児童への特別支援学校のセンター的機能を通したわり算指導に関する一考察』(一般社団法人 日本LD学会)2021年12月16日閲覧