男女の関係だけでなく、
あらゆる人間関係は距離感で違ってきます。
良好な人間関係を築くことは、良好な距離感をとることでもあります。
川北義則氏の「人との距離感がわかる人、わかっていない人」を参考に、人間関係の距離感について考えます。
今日は年下や部下と接するときの距離感についてです。
やっぱり目上の人は気を遣われる
年上と年下、上司と部下。
年功序列の雰囲気も一昔前とずいぶん変わり、上下関係が緩くなりつつある昨今ですが、それでも上下関係というものは厄介です。
目下の人は、常に目上の人に気を遣ってしまうものです。
どんなに打ち解けても、
やっぱり目上の人は同世代の気楽さには敵いません。
自分が年上や上司なら、一歩身を引いた距離感でいることが結局のところ年下や部下に慕われるのです。
プライベートなことは抽象的に、仕事においては具体的に
年下や部下に対しては、
プライベートなことは抽象的に、仕事のことは具体的に話す方がいいです。
理由は2つあって、
1つ目は口から出たことは独り歩きするから。
2つ目は上司が具体的に話すと部下もそうせざるを得なくなるから。
どこまでプライベートな話題を話すか。
これは話す側の自由です。
プライベートなことを「話したくないのに話さないといけない」関係は面倒くさいです。
年上や上司は相手が気楽に話せるような配慮をします。
逆に仕事のことは具体的に話した方がいいです。
「具体的に」とは決して「細かい」ということではありません。
「具体的に」とは「大事なポイントをわかりやすく簡潔に」伝えるということです。
年下や部下の褒め方
一昔前と違って、今は年下や部下を叱っても嫌われるだけ、ということが少なくありません。
相手をうまく褒めて相手のモチベーションを高めるようなコミュニケーションが仕事では必要だったりします。
教えるのではなく、相手に気付かせることが重要なわけです。
目下の人に素直に耳を傾けてもらう方法に「後褒め」があります。
「こんなミスしたらダメだよ。キミらしくないね」
といった感じです。
その物事に対しては指導するけれど、その人自身に関しては高く評価しているんだというスタンスを見せるわけです。
また、
「○○課長から聞いたけれど、ずいぶん頑張っているようだね」
といったように、褒めるときに人を介するパターンも有効です。
一方で、「人間関係は相手を褒めさえすればいい」と安易に考えてはいけません。
アメリカの心理学者リチャード・ファースン氏は、褒めることに関して疑問視する理由を5つ挙げています。
・褒めることが脅迫として受け取られる可能性がある。
・褒めるとは相手を下、自分を上と捉えることでもある。
・褒められることで「自分はこれでいいんだ」と思うと、創造性が制限される
・余計なひと言で苦言を言いがちになる
・特定の誰かを褒めると、他の人のやっかみにつながる。
やはり「叱る」にせよ「褒める」にせよ程度というか、塩梅が必要で、そのためにはその人自身をよく知ることが大切なのでしょう。
自分が目下なら
ちなみに、自分が目下の場合でも距離感の取り方は大切です。
目下の人は目上の人に対して、
敬意を持ちながらも自分の人格を尊重する距離感をとるほうがいいです。
例えば、上司に飲みに誘われる。
ちょっとした用事はあったけれど、まあ、キャンセルして飲みに行ってもいいかなと思っている。
そういうときは、
「実は、○○予定があったんですけど今日はキャンセルします」
と素直に言います。
逆に用事を優先したいなら素直に断ります。
「はい、行きます」だけでは、
「あいつは俺が誘えばいつでもついてくる」と思われるかもしれません。
そうなると上司と部下の距離感がおかしくなります。
おわりに
人間関係は距離感が大切です。
目下は目上に大なり小なり気を遣ってしまうものです。
目上は一歩身を引いた距離感を持つことが結果として良好な人間関係を築きます。
最近は飲み会で上司が説教をするだけして、会計は割り勘なんてこともありますね。
けれどそれじゃあ目下は嫌になるだけです。
「先に帰るけれど、ここまでの勘定はしておいたから、あとはごゆっくり」
と、目上は先にお金を支払って、先に帰るくらいがちょうどいいのです。
「○○さん、もう帰られるんですか?まだいいじゃないですか」
人によっては部下や後輩からそう言われるかもしれません。
けれどそれでいいのです。そう言われるうちに帰ります。
年下や部下や後輩から、距離を詰めてくれるうちが花なのです。
そこに甘えて目上から距離を図々しく詰めれば、途端に「めんどくさい人」になってしまいます。
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参考資料
川北義則『人との距離感がわかる人、わかっていない人』三笠書房、2015年