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ペリー就学前プロジェクトとは?
ペリー就学前プロジェクトとは1960年代にアメリカで行われた社会実験です。
ペリー小学校附属幼稚園で行われたことからこの名前が付いています。
「ペリー・プレスクール・プロジェクト」
「ペリー就学前計画」
など訳され方はいろいろありますが、いずれも同一のものです。
ペリー就学前プロジェクトが評価されている理由は、
- 幼児期に適切な教育を行うことで、その効果が大人になっても続いている
- 教育のために国が支払った費用より、その子たちが大人になって社会に還元した経済的プラスのほうが大きい
という2つの点が統計的に証明されたところです。
ペリー就学前プロジェクトの内容
対象児
子供達に、どんな教育を行うべきか。
いつの時代も「教育」は試行錯誤されています。
ペリー就学前プロジェクトは子供達に将来にわたって良い効果が持続するような結果が得られた教育プログラムのひとつです。
ペリー就学前プロジェクトの対象となった子供達は、
IQ70~85、年齢は3~4歳です。
ペリー就学前プロジェクトは知的障害と健常児のボーダーラインに位置する幼稚園の子供達を対象にした教育プログラムと言えます。
カリキュラム
ペリー就学前プロジェクトは、
- 教師一人に対して子供5.7人の少人数クラス
- 1日2時間半あたりの教育を平日毎日
- 毎週末に1.5時間の家庭訪問
が主な内容となっています。
指導内容はそこまでかっちり決まってはいません。
強いてあげれば、子供達の理解度に合わせた指導。
子供達の想像力を促すような柔軟な授業といったところです。
教師と親が毎週1時間半以上話をする機会を持っていることが特徴的ですね。
ペリー就学前プロジェクトの結果
ペリー就学前プロジェクトに参加した子供達はそうでない子と比べ、
- 以後の学校の中退や留年が少ない
- 特別支援クラスの利用が少ない
- 大学進学率が高い
- 雇用率が高い
- 犯罪歴が少ない
- 生活保護対象が少ない
といった結果になりました。
ペリー就学前プロジェクトに参加した子供達はそうでない子供達と比べ、社会的に望ましい状態になったと言えます。
さらにペリー就学前プロジェクトの重要な点は、
プロジェクトのためにかけたコストよりも対象の子供達が社会的に貢献した結果のほうが大きかったという点です。
少人数クラスなど人件費はかかるものの、将来的に子供達が大学に進学して年収が上がったり、全体として犯罪歴が少ないことで刑務所などの公共コストが下がったことが要因です。
具体的には1ドルのコストあたり9ドルの利益が出たそうです。
まとめ
プロジェクトの意味
成功した社会実験と位置付けられるペリー就学前プロジェクト。
ペリー就学前プロジェクトはもともと、
「子供たちのIQを上げるにはどうしたらいいか」
という目的からスタートしました。
ペリー就学前プロジェクトの対象の子供達は、そうでない子供達より小学校入学時点でIQは高い傾向にありました。
しかし、4年前後経過すると対象の子とそうでない子のIQの差がほとんどなくなってしまいました。
ペリー就学前プロジェクトによるIQを高める効果は4年前後しか持続しなかったのです。
にもかかわらず、子供達は大学に進学できたり雇用されたりと将来にわたって良い結果が生まれました。
「子供たちのIQを上げるにはどうしたらいいか」という目的では失敗に終わったペリー就学前プロジェクト。
しかし、
ペリー就学前プロジェクトは「人生をより良いものにするにはIQ以外に大切なものがある」ということを統計的に証明した貴重なプロジェクトとなったのです。
プロジェクトの本質
ペリー就学前プロジェクトはIQ以外の人生に必要な何かの力を向上させました。
その何かとはなんだったのでしょう。
知的好奇心。最後まであきらめず物事に取り組む力。友達と協力する力。柔軟な想像力。
いろいろあります。
ペリー就学前プロジェクトの授業内容は、ものすごく突飛で前例のない内容といったわけではありません。
あくまでその子ペースに合わせたその子の興味を促すような授業です。
ペリー就学前プロジェクトは勉強を教えながらも勉強以外の力の方が結果としては伸びたわけです。
二重意図教育
このように、勉強を行いながらも学力ではなくそれ以外の力を伸ばすことを目的とすることを二重意図教育と言ったりします。
単に学力や知識に目を向けるのではなく、学ぶ過程の興味や思考錯誤、学習態度や想像力に着目して指導する。
二重意図教育が子供達の将来に影響を与えることがわかります。
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