場面緘黙の家族歴
子供が場面緘黙の場合、親も場面緘黙やそれに類する既往を持っている可能性が比較的高いと考えられます。
「場面緘黙は遺伝する」といった表現はできないものの、場面緘黙児の支援には家族歴の把握も重要であることが示唆されます。
解説
親の場面緘黙の既往の有無
場面緘黙児を対象にした調査によると、場面緘黙児の親の中で社会恐怖や回避性障害の既往があるのは70%、場面緘黙の既往は37%となっています。
このように家族歴を見ると、場面緘黙児は親も少なからずその傾向が見られることがあるようです。
場面緘黙の行動特徴
場面緘黙の行動特徴は抑制的気質と似ています。
抑制的気質とは、初めての場面や人に慣れるのに非常に時間がかかる気質のことです。
場面緘黙や社会恐怖は、行動抑制的な子供の発達段階で示す症状と考えられています。
人見知り・引っ込み思案・保育園への行きしぶりなどが常識の範囲を超えて明らかに強い場合は、抑制的気質の強さを疑ってみてもいいでしょう。
場面緘黙は放っておくと場合によっては不登校・引きこもりなどに至るケースもあるため、早期のサポートが有意義です。
先天的か後天的か
場面緘黙は遺伝的素因や脳機能によって発症するもので、「育て方が悪いから場面緘黙になった」というわけではありません。
このため子供が場面緘黙だからといって親や養育者の「育て方」を責めることは適切でないと言えるでしょう。
一方で、遺伝的素因だけで場面緘黙は発症するわけでなく、素因に様々な環境や体験が複雑に絡み合って発症します。
つまりイメージとしては不安気質が元々強めであった子供に、環境や体験が複雑に絡み合って発症します。
このため育て方だけで場面緘黙になるわけではありませんが、不安気質の強い子に対する「より良い接し方」というものはあると言えます。
場面緘黙の解説
参考資料
『場面緘黙(選択性緘黙)の多様性—その臨床と教育—』(日本不安症学会)2023年7月22日閲覧