子育てにはいくつかの節目があり、その節目によって出てくる悩みも変わってきます。
1. 10の発達の危機段階
障害のあるお子さんを育てる場合、その障害ゆえの悩みや葛藤というものもあります。
これらをWikler氏らは10段階にまとめました。
つまり障害のあるお子さんを育てる上で悩みやすい時期が10段階あるという説です。
具体的に、10の発達の危機段階は
1.診断時
2.健常児の子供が歩き始めるとき
3.子供はしゃべりだすとき
4.下の子(弟・妹)が障害のある子供の能力に追いつくとき
5.家以外の場所に子供を預けるとき
6.学校に通わせ始める、特別支援クラスに入れるとき
7.問題行動や発作、そのほか健康問題などの危機に対処するとき
8.子供が思春期に入ったとき
9.子供が成人になったとき
10.親が死んで、子供の保護と世話について問題が起こったとき
となっています。
2. 過大評価される危機段階
1981年にWikler氏らは、障害児の親と専門家(ソーシャルワーカー)の両方に質問紙調査を行いました。
親と専門家にそれぞれ、10の発達の危機段階それぞれにおいて苦痛に感じる度合いを点数化してもらいました。
その結果、
2.健常児の子供が歩き始めるとき
4.下の子(弟・妹)が障害のある子供の能力に追いつくとき
6.学校に通わせ始める、特別支援クラスに入れるとき
に関して専門家は親よりも高い点数をつける傾向にありました。
つまり2,4,6の項目に関しては親が実際に感じる以上に、専門家は「苦痛だろうなあ」と過大評価しがちだったのです。
3. 過小評価される危機段階
一方で、
9.子供が成人になったとき
などの後半の項目に関して、専門家は親よりも低い点数をつける傾向にありました。
つまり、後半の項目に関しては親が実際に感じるよりも、専門家は「そこまで苦痛ではないだろう」と過小評価しがちだったのです。
4. まとめ
以上のように、障害のある子供を育てる上で特に悩みやすい時期というのはいくつか段階があります。
さらにその時期の悩みや悲しみの度合いは当事者と第三者では認識が違っている。
発達の初期の、健常児が障害児を追い抜いてしまう時期や学校に入学する時期は当事者が思う以上に第三者は「親は悩んでしまうだろうな」と過大評価しがちです。
一方で、子供が成人になったときなど発達段階的には後半に該当する時期は当事者の気持ちに反して第三者は「そんなに大きな悩みはないだろう」と思いがちです。
当然人によって感じ方は異なるので一様には言えませんが、いずれにせよ当事者と第三者では認識のズレがあるという貴重な教訓です。
5. その他の記事
6. 参考資料
『親が子供の障害を受容して行く過程に関する文献的検討』(J-STAGE)2018年6月3日検索
『親の障害の認識と受容に関する考察-受容の段階説と慢性的悲哀』(障害保健福祉研究情報システム(DINF))2018年6月3日検索
『軽度発達障害児をもつ親への支援』(流通科学大学)2018年6月9日検索