感情のとらえ方の傾向
自閉症スペクトラム障害は定型発達と比べると、自己の感情を一般的な事象として語る傾向があります。
「○○されて私は嬉しかった」という視点ではなく、「○○されると人は嬉しいものだ」といった一歩引いた視点で認識する傾向があるということです。
これは発達障害者の自己理解において興味深い傾向の1つと言えます。
解説
発達障害と自己理解の研究
日本発達心理学会の論文に、自閉症スペクトラム障害者の自己理解について調査・研究したものがあります。
定型発達の人と発達障害者を対象に、自己理解について答えてもらいその回答傾向を分析したものです。
「自分はどういう人間なのか」自覚できることは、アイデンティティを確立する上で重要な要素の1つでしょう。
そして自閉症スペクトラム障害者の場合、定型発達と比べて自己理解に特徴的な要素があると考えられています。
内的視点の有無
自分の感情に関する体験について語るとき、内的な視点の有無が発達障害者は乏しい場合があります。
例えば感情を伴う体験について語るとき、定型発達の人の場合「誕生日に新しい自転車をもらって嬉しかった」といった具体例や相手の気持ちを含めて語る様子が見られます。
一方で自閉症スペクトラム障害者の場合「何かとてもいいことをしたとき幸せになった」といったような抽象的で万人に当てはまるような表現になる傾向があります。
もちろん、人の考え方や価値観は千差万別なので障害の有無によって完全に決まるものではありませんし、ケースバイケースな面もあるでしょう。
しかし、内的視点の有無という観点は、自閉症スペクトラム障害を伴う言動を分析する上で興味深い着眼点と言えるでしょう。
発達障害と自己理解
参考資料
滝吉美知香、田中真理(2011)『思春期・青年期の広汎性発達障害者における自己理解』(一般社団法人 日本発達心理学会)2024年9月14日閲覧