自閉症スペクトラムの自己理解と対人関係
自閉症スペクトラム障害(ASD)の人は、他者との一方的な関係で自己理解を行う傾向があります。
これには2つの種類があります。
1つは「人からこう言われた」という評価を鵜呑みするケースです。
もう1つは、相手の反応を考慮せず「相手に〇〇しているから私は〇〇な人間だ」と解釈してしまうケースです。
このような傾向が定型発達の人と比べて高い可能性があります。
解説
自己理解と対人関係
自己理解とは文字通り「自分はどういう人間なのか」ということを考え理解することです。
自己理解は心の安定や生活の工夫に役立つ可能性があります。
そして自己理解は、人との関りが影響を及ぼす場合があります。
対人性タイプ
対人関係が自己理解に影響を及ぼすパターンは大きく3つ考えられます。
1つ目は、他者から自分への一方的な理解です。
他者から「あなたはマイペースな人だ」「あなたは明るいね」などと言われてそれをそのまま鵜呑みにするケースです。
2つ目は、自分から他者への一方的な関係による自己理解です。
(相手が気を遣っているのに)「私は話すのが上手」と自分のことを評価するなどです。
3つ目は、相互的な関係の中での自己理解です。
「親切にして相手が喜んでくれると私も嬉しい」などです。
これらが合わさって自己理解につながっていくと考えられますが、これら3つのバランスは人によって異なるでしょう。
自閉症スペクトラム障害の人の場合、定型発達の人と比べると対人関係を通しての自己理解が特徴的であることがわかっています。
受動タイプと積極奇異タイプ
自閉症スペクトラム障害における受動タイプの人は、他者から自分への一方的な理解が自己理解につながるケースが定型発達より高い傾向にあります。
ここで言う受動タイプとは、「人との接触を受け入れ他人を避けはしないが、自分から関わろうとはしないタイプ」です。
これに対し、自閉症スペクトラム障害における積極奇異タイプの人は、自分から他者への一方的な関わりで自己理解をする傾向が定型発達の人より高い傾向にあります。
ここで言う積極奇異タイプとは、「相手の感情やニーズに注意を払わず自分の関心事を独特の一方通行で話すタイプ」です。
発達障害と自己理解
参考資料
滝吉美知香、田中真理(2011)『思春期・青年期の広汎性発達障害者における自己理解』(一般社団法人 日本発達心理学会)2024年9月14日閲覧