実行機能と言語ラベリング
目標達成のために思考や行動を制御してくれる認知機能を実行機能と言います。
私達は例えば買い物をするとき、「えーっと、今日はカレーを作るから玉ねぎと人参を買って」のように、自分の行動を言葉で整理することがあります。
このように人にとって言語は実行機能に何かしらの影響を与えている可能性が考えられます。
実行機能は幼児期に急激に発達することが知られています。
一方で、幼児期の実行機能に言語が具体的にどのように影響しているのかはまだ不明な点も多々あります。
これらに関連し、実行機能における目標レベルの言語と刺激レベルの言語についてとりあげます。
解説
DCCS課題とは?
実行機能をみる課題の1つに、DCCS課題というものがあります。
DCCS課題とは、同じ絵カードを複数の視点で分類できるかを見る課題です。
例えば「赤い車」「青い車」「赤い傘」「青い傘」といった絵カードがあるとします。
これを「車か傘か」で分類したあと、「赤か青か」でも分類できるかやってもらいます。
個人差はあるでしょうが、DCCS課題はおおむね5歳頃には安定して正答することが可能になると考えられています。
DCCS課題からみる言語ラベリングの有効性
DCCS課題において2回目の分類ができない3歳前後の子であっても、「これは何色かな?」など注意を促すことで、分類に気づけるケースがあります。
DCCS課題の場合、1種類目の分類で「形で分けましょう」などと教示し、2種類目の分類でもちゃんと「今度は色で分けましょう」など事前に教示は行います。
しかしそれでも、1種類目の分類が尾を引いて2種類目の分類なのに形で分けてししまうケースがあります。
このようなとき、子供に分類のルールを再認識してもらうために言葉かけで注意を促すという方法が考えられます。
そしてこの言葉かけには、刺激ラベリングと目標ラベリングがあると考えられます。
つまり、色で分けないといけないのに形の分類をしてしまっているとき、「これな何色かな?(刺激ラベリング)」と促すやり方と「今は色で分けてるかな?形で分けてるかな(目標ラベリング)」と促すやり方があるということです。
刺激ラベリングと目標ラベリングの有効性
子供の気づきを促すためには、刺激ラベリングと目標ラベリングどちらが有効かは諸説あります。
一例として京都大学の論文における柳岡開地氏の研究では刺激ラベリングの有効性を支持しています。
つまり、子供に助言としての言葉かけを行う場合、目標レベルの言葉かけではなく「刺激のどこに目を向けるのか」というよりかみ砕いた言葉かけが有意義であることを示唆しています。
参考資料
『言語ラベリングが実行機能課題に及ぼす効果とその持続性-幼児期に着目して-』(京都大学学術情報リポジトリ)2021年12月4日検索
『日本語版 BRIEF-P の開発』(日本発達障害支援システム学会)2021年12月30日検索