語用論とは?
語用論とは、言葉の意図に着目した理論です。
例えば家族が外食をしていて、子供が口周りを汚してしまったとします。
そしてお母さんがお父さんに「ティッシュ持ってる?」と聞いたとしてます。
このような状況の場合、お母さんはお父さんがティッシュを持っているかいないかを単に聞いているのではなく、「子供の口を拭きたいからティッシュがあるならもらいたい」という意図で言ったことがわかります。
このためお父さんが「持ってるよ」と言うだけでは不自然です。
この状況であればお父さんは「持ってるよ」と言いながらポケットティッシュをお母さんに差し出すか、子供の口元を拭いてあげることが自然なやりとりでしょう。
このように、人は人とのコミュニケーションにおいて言葉通りの意味とは別の意図で「語」を「用いて」います。
こういった互いの理解がなぜ成立するのか。こういったメカニズムを研究するのが「語用論」です。
語用論は比喩や皮肉を人はなぜ理解できるのかということを研究する学問と言えます。
解説
語用論とコミュニケーション
冒頭の例で述べた通り、人はコミュニケーションにおいて必ずしも言葉通りの意味で会話をしているのではありません。
そこには言葉の意味とは異なる意図がある場合がほとんどです。
言葉はコミュニケーションにおいて重要な手段の1つですが、単語の意味や文法だけを理解しても円滑なコミュニケーションは難しいです。
円滑なコミュニケーションには互いの気持ちや意図を汲み取る語用論的な理解が必要です。
語用論の具体例
語用論の主な例としては冒頭で述べたような婉曲な表現があります。
婉曲な表現、つまり遠回しの表現は日常生活で非常に多く見られるでしょう。
例えば友人の家に遊びに行って「もうこんな時間だ」と言えばそれは「そろそろ帰る」の意味でしょう。
その他、語用論の例として比喩や皮肉が挙げられます。
比喩とは物事を何かに例えることです。
例えば「バケツをひっくり返したような雨」は「水がたまったバケツを一気にひっくり返すくらい、水の量が多い激しい雨」を指すでしょう。
皮肉とは言葉としては肯定的な表現で、否定的な意図を伝えることです。
例えば誰かが会社に遅刻してきたときに「すごいね。私にはとてもできないわ」と言えば遅刻をした人を暗に見下す皮肉と言えるでしょう。
参考資料
『語用論的アプローチによる言語指導』(一般社団法人 日本特殊教育学会)2022年9月11日閲覧
『自閉症における語用論研究』(心理学評論刊行会)2022年9月11日閲覧