逃避消去法とは?
逃避消去法とは、嫌いな食べ物を食べる習慣形成を行い、「嫌い→食べない→もっと嫌いなイメージができる」という負のループを断ち切る方法です。
偏食は個人差があり、「この方法方なら100%誰でも治る」という万能の方法はありません。
このため逃避消去法も様々な方法論の1つです。
しかしながら、行動心理学などに基づく逃避消去法は、偏食への対処法として比較的有意義なものであると考えられます。
一方で、行き過ぎた逃避消去法は子供を追い詰めてしまうため、行う場合は状況の見極めが重要で、行う人(親や先生)のきちんとした知識が必要な方法です。
解説
偏食に対する心理学的手技
逃避消去法は、応用行動分析学に基づくアプローチの1つです。
つまり人間の行動を心理学的に分析しアプローチを考える科学的根拠を踏まえた方法です。
偏食が偏食のままである背景の1つとして、「嫌いな食べ物を食べないで済ませる→余計にそれを嫌いと自覚する」という負のループが生じていることが考えられます。
この点に着目し、嫌いな食べ物を食べる機会を作るようにすることが逃避消去法です。
逃避消去法の最も強いやり方は、「食べるまで席を立たせない」「無理やり食べさせる」などです。
しかしながら、当然こういったやり方は倫理的に好ましくないことは明らかです。
このため、逃避消去法はその状況を見ながら倫理的配慮を盛り込んだやり方が重要です。
倫理的配慮での逃避消去法
嫌いな食べ物を無理やり食べさせ過ぎるのは良くないですが、かと言って嫌いな食べ物に挑戦する機会が全くないことも好ましくないと考えられます。
日本栄養改善学会の論文において、親や先生から無理やり嫌いな物を食べさせられても7割の人は大人になってもそれが嫌いなままであるという見解が見られます。
一方で日本民族衛生学会の論文では、親が子供の嫌いな食べ物を全く食卓に出さない行為は子供の偏食の要因の1つと指摘されています。
以上から折衷案として、たとえ子供が嫌いであってもそれを食卓に取り入れる習慣を維持することは大切であると考えられます。
例えば子供がピーマンが嫌いだとして、「どうせ嫌いで食べないから」と料理に使わないのではなく、少しでもいいからピーマンを使ったメニューを織り交ぜていくことが大切です。
逃避消去法の実際の方法
その子がその食べ物をどのくらい嫌いかで、逃避消去法の手続きは異なるでしょう。
例えば一口くらいなら食べられる程度であれば、まずは一口は食卓で食べる機会を習慣化していきます。
一口食べればあとは食べなくていいという「終わりを明確にする」ことで、まずは一口食べる習慣をつけていきます。
一口も食べられないほど嫌いな物であれば、料理法を変える、食べる場所や雰囲気を変えるなどしてみてもいいでしょう。
あるいは食べなくてもいいけれど食卓にとりあえず他の家族が食べるように出しておくという習慣も大切かもしれません。
いずれにせよ、「どうせ嫌いで食べないから」と子供がその食物を目にする機会・食べる機会をなくさないように配慮します。
また、逃避消去法だけでは偏食への対応はなかなか難しいことが多いので、他の方法も併用することが有意義な場合もあります。
その他の偏食への対処法
参考資料
『自閉スペクトラム症児の偏食に対する食物同時提示法の適用』(NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会)2021年9月11日検索
『偏食の観点からみた幼稚園児の食習慣に関するパス解析』(一般社団法人 日本家政学会)2021年9月11日検索
『幼児の偏食と生活環境との関連』(日本民族衛生学会)2021年9月11日検索
『幼児期前期における嫌いな食べ物の質的変化に関する縦断研究』(特定非営利活動法人 日本栄養改善学会)2021年9月11日検索