複利の概念
複利とは利子にも利子がつくことです。
お金に関する言葉ではありますが、物事が雪だるま式に変化していく概念は生活の中で非常に重要です。
借金は金利を返さないとどんどん増えますし、勉強は最初の授業がわからないとどんどん苦手なところが増えていきます。
仕事を今時間がないと後回しにすると後でかえって時間を使うことがありますし、健康を軽んじた生活習慣は後の大病を招くかもしれません。
小さな積み重ねを雪だるま式に増やしていくことは、良くも悪くも大きな力となります。
解説
露天商の話
行動経済学者のセンディム・ムッライナタン氏らの話に以下のようなものがあります。
実際はインドの露天商の話であるためお金の単位がルピーとなっていますが、ここではわかりやすく日本円で例えたいと思います。
ある露天商は金貸し屋から1日に10万円を借りて商売をします。
1日の売り上げはおおむね11万円。
露天商は借りたお金をその日のうちに返さないといけないわけですが、その金利は5%です。
つまり露天商は10万と5,000円を金貸し屋に返さないといけません。
このため露天商の1日の収入は、借金を返した残りの5,000円が露天商のその日の稼ぎになります。
複利と借金
この露天商が収入を上げる方法は明らかで、借金をせず自分で10万円を準備することです。
そうすれば毎日、金利の5%を払わなくて済みます。
金利を払わなくて済めば、露天商の稼ぎは5,000円ではなく1万円、つまり倍になります。
そのためには、少しずつお金を貯めることが必要です。
例えばちょっとした無駄遣いをやめて1日で500円を貯めたとします。
次の日、露天商は10万円を借りるのではなく9万と9,500円借りれば、少し金利が減ります。
これを繰り返していくのです。
この小さな積み重ねですが、500円が10万円に相当する200日くらいかかる印象をもつかもしれません。
しかし実際は金利がどんどん減っていくので、計算上、露天商はおよそ50日くらいで借金をしなくてよくなります。
つまりおよそ1,2か月で収入が倍になるのです。
このように、金利や複利といった概念は思った以上に大きいものです。
複利と借金
金利や複利の概念は非常に重要です。
しかしながら感覚では実感がわかないことが多いのもまた事実でしょう。
ムッライナタン氏らの調査によると、インドのチェンナイにあるコヤンベドゥ市場では、56%以上の人が上記のような借金をしているようです。
そしてその借金の期間は平均で9.6年間にもなるようです。
このように、人が意図的に余裕を作り出すことが感覚としていかに難しいかがわかります。
参考資料
センディル・ ムッライナタン、エルダー・ シャフィール『いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学』早川書房、2015年 p163-