ジャグリングとは?
ジャグリングとは、目の前の作業に手一杯で、少し先の見通しを冷静に立てられない状態のことです。
行動経済学者のセンディム・ムッライナタン氏らは、人の欠乏に関する悪循環をこの「ジャグリング」という言葉で表現しています。
解説
欠乏の罠による悪循環
目の前のことに忙殺されると、先を見越した準備さ作業を怠ってしまうことがあります。
例えば目の前の仕事に手一杯で、来月に乗る予定の飛行機のチケットを取り忘れてしまう。
これによって割高の運賃を払ったり、同じ額で飛行機を取るため別の航空会社を探し直す羽目になってしまう。
目の前のことに意識を囚われ、先のことを考えられないとあとから思わぬ出費や時間のロスを生み出してしまいます。
そしてその生み出されたロスのためにまた忙しくなってしまう。
このように忙しさで未来のことに手が回らず、未来も忙しいままの様子はまるで一つのボールを投げてもう一方をキャッチするジャグリングのようです。あるいは自転車操業と言えるでしょう。
お金がない、時間がない、余裕がないといった「欠乏」は、未来の時間を奪い悪循環を生んでしまう可能性があります。
欠乏のサイクル
お金がない人の中には、過去の借金を返済するために今のお金を支払っている人がいます。
時間がない人の中には、以前計画を立てなかったゆえに作業に時間がかかっている人がいます。
人の欠乏の背景には、過去に忙しさで処理できなかったことの「ツケ」が回ってきている場合があります。
このような欠乏を抜け出すには、未来のことを冷静に処理できる習慣の獲得が必要です。
具体的には不測の事態に備える貯金やスケジュールの余裕などです。
例えばスケジュールの余裕は丸一日空白にするという大きな余裕というよりは、毎日の作業を調整できるこまめな余裕などを指すでしょう。
参考資料
センディル・ ムッライナタン、エルダー・ シャフィール『いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学』早川書房、2015年 p168-