幼児と成人の実行機能の違い
幼児と成人では実行機能の脳の働きが異なることがわかっています。
幼児期は1つの因子で処理していた実行機能ですが、成人になると課題に応じて複数の因子を使い分ける様子が見られます。
この複数の下位概念を使う様子は厳密には児童期以降から見られます。
解説
実行機能とは?
実行機能とは、目標志向的な思考・行動・情動の制御機能のことです。
つまり目標達成のために自分をコントロールする力のことです。
実行機能は単独の1つの機能ではなく、複数の機能で構成されているとする考えが主流です。
しかしその構成要素、つまり下位概念がどのようなものかは研究者によって諸説あります。
比較的わかりやすく有名なものはMiyakeらが提唱する下位概念です。
これは実行機能を
- 抑制機能(inhibition)
- シフティング(切り替え)(shifting)
- アップデーティング(更新)(updating)
の3つで考える概念です。
幼児期の実行機能
このように成人は目標達成のために実行機能の下位概念を使い分けていることが考えられます。
しかしながら、幼児期の場合はこういった複数の下位概念の使用が見られず、1つの因子を使用するモデルの方が課題の取り組みの様子を説明しやすいことがわかっています。
児童期の実行機能
一方で児童期以降では複数の下位概念が同定できることが示されています。
このように、人は加齢に伴い実行機能課題中の前頭前野の活動が全体的から局所的になっていくと考えられます。
これは例えるなら、実行機能は子供の頃は一人の社長がコントロールするワンマン経営的な側面があり、大人になっていく中で複数の重役が意思決定するようなシステムになっていくと言えます。
参考資料
『実行機能の初期発達,脳内機構およびその支援』(心理学評論刊行会)2021年11月6日検索
『自己制御と実行機能の関係の検証に係る諸問題』(心理学評論刊行会)2022年5月5日検索
『知的障害児のプランニングと抑制機能の支援に関する基礎的・実践的研究』(東京学芸大学)2022年5月5日検索