サイズ課題とは?
サイズ課題とは、子供向けのストループ課題の一種です。
子供の優性反応抑制の力を見る際や、これらを成人と比較するために用いられることが多いです。
解説
ストループ課題とは?
ストループ課題と言うと、一般的には色名ストループ課題がよく例に挙がると思います。
色名ストループ課題とは、例えば「赤」と書かれた青色の文字の色を答える課題です。
文字の色を答える課題なので当然この場合は「青」と答えないといけないわけですが、文字自体は「赤」と書かれているため被検者ついつい「赤」と答えてしまいます。
ストループ課題は上記のような性質から、実行機能における「優性反応抑制」能力を見る検査と位置付けられます。
「優性反応抑制」とは先につい表れてしまう自分の反応を冷静に制御できるかという力です。
色名ストループ課題はついつい文字を読んでしまう「優勢反応」を「抑制」し、あくまで文字の色を答えてもらいます。
ストループ課題を子供に行う場合の問題点
このようにストループ課題は「ついつい出てしまう反応」を前提としています。
しかしながら、文字を読むことが大人と比べて定着しきっていない子供の場合、成人と同レベルの優勢反応を期待できるかと言うと疑問が残ります
これは大人と子供の優勢反応抑制の力を比較できないことを意味します。
また、読み書き障害といった文字を読むことにそもそも困難さを示す子供の場合、色名ストループ課題では優勢反応抑制の評価が難しいと言えます。
こういった経緯から、文字を使わずに子供に優勢反応を生じさせるようなストループ課題が必要になってきます。
サイズ課題の内容
サイズ課題は、提示された絵の大きさに関わらずその物自体の大きさを答えてもらうストループ課題です。
例えば同じ紙に大きく書かれたアリと、小さく書かれた象を見て、その大きさを答えてもらいます。
当然ながら、実際の動物で考えるとアリより象のほうが大きいです。
しかし象よりアリの絵が大きく書かれたものを呈示されるとついついアリのほうを大きいと言ってしまいがちです。
このようにサイズ課題は知覚的大きさ(絵の大きさ)に惑わされず意味的大きさ(実際の動物の大きさ)を答えることがポイントです。
障害科学学会の濱田香澄氏の研究を参考にすると、サイズ課題は「アリが大きく・像が小さく」書かれた絵だけでなく「アリが小さく・像が大きい」といった通常の絵や「どちらも同じ大きさ」などの絵も混ぜ合わせて行うようです。
サイズ課題の問題点
濱田氏の研究では、サイズ課題において子供の年齢は6~8歳でした。
また、名古屋女子大学の矢野円郁氏らは、物のサイズに関する知識の少なさやなどにより、サイズ課題は就学前の子供(幼児)には適用が困難であると指摘しています。
このように、サイズ課題は他のストループ課題と同様、優勢反応がきちんと成立しているかの見極めが重要です。
参考資料
『心の理論の生涯発達における実行機能の役割』(心理学評論刊行会)2021年11月6日検索
『幼児版ストループ課題の作成』(公益社団法人 日本心理学会)2021年11月6日検索
『実行機能の初期発達,脳内機構およびその支援』(心理学評論刊行会)2021年11月6日検索
『動物絵を用いたストループ課題遂行時の前頭前部における脳血流の変化からみた干渉抑制機能 : 定型発達成人による検討ならびに小児の予備的検討』(障害科学学会 国立国会図書館デジタルコレクション)2021年12月30日検索