処理能力に注意を払う
人間の処理能力は変動するため、その人の処理能力の状況に応じて活動の予定を立てる方が賢明です。
「心ここにあらず」だと物事に集中できないことは周知の事実だと思います。
人は人が思っている以上に無意識に処理能力を奪われていることがあります。
お金や時間や体力と同じように、処理能力もその人が持っている資源の1つです。
人は月末にお金がなければ家計を切り詰めます。
時間がなければ残りの時間で何をできるか考えます。
体力が厳しいときは無理をしない、少なくとも「無理かも」と認知はできます。
しかし処理能力については考えを巡らせないことが少なくありません。
「今は自分の処理能力が落ちているから、重要な意思決定は控えよう」といった判断はあまりしません。
お金や時間や体力と同じように、処理能力という自分の資源をうまく使うことは重要です。
解説
トンネリング
「トンネリング」とはある目的に意識が向くあまり、他の目的がおろそかになってしまう状態のことです。
例えば朝、会社に出勤する途中で車で事故を起こしてしまい相手方とのやりとりを今後行わないといけない。
このような状態ではその日の仕事に集中することは難しいかもしれません。
トンネリングはトンネルに入ったような視野狭窄を心理面に与え、目の前のやるべきことに対して処理能力を下げます。
トンネリングによる処理能力の低下を回避するには、自身をトンネルの外に出す工夫が必要です。
欠乏とリマインダー
お金がない、時間がない、ゆとりがないといった「欠乏」は、人をトンネリングの状態にさせ処理能力を低下させます。
このような状況から抜け出すためには、根性論ではなく仕組み作りが重要でしょう。
1つの方法としてはリマインダー(通知)を活用することです。
お金の使い過ぎや作業の締め切りが近づいた際にそれを自分に通知できる仕組みを作ることです。
それは手帳にメモをしておいてもいいですし、アラームの鳴るアプリなどを活用してもいいでしょう。
いずれにせよ、欠乏はそれまでの余裕を無駄にしたことで起こるケースが多いです。
お金がないのは給料日のその日に散財したからかもしれないし、締め切りに間に合わないのは先週遊んでしまったからかもしれません。
大切なのは自分の行動を予測して軌道修正してくれる通知の仕組みを作り、自身の心理的な視野狭窄を予防し、常に「ちょっとしたゆとり」を確保しておくことです。
それが個人の処理能力を高めてくれるでしょう。
参考資料
センディル・ ムッライナタン、エルダー・ シャフィール『いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学』早川書房、2015年 p288