予期せぬ移動課題とは?
「予期せぬ移動課題」とは、心の理論における誤信念の理解を見るための課題です。
例題としては「サリーとアン課題」が有名であり、予期せぬ移動課題はほぼサリーとアン課題を指す場合が多いです。
解説
心の理論とは?
心の理論とは、自分や他者の意図・知識・信念・感情といった心的状態を理解したり説明したりする能力のことです。
誤信念とは?
心の理論の成熟・獲得は、誤信念の理解をもって判断されることが多いです。
誤信念とは、他者の抱いている誤った信念のことであり、これを正確に推測できるかが誤信念の理解の力になります。
サリーとアン課題とは?
サリーとアン課題の内容は以下のようになっています。
サリーとアンが部屋で遊んでいます。
サリーはボールをカゴの中に入れて部屋を出ました。
サリーがいない間に、アンがボールを別の箱の中に移します。
サリーが戻ってきてボールを探すとき、どこを探すでしょう?
答えは「カゴを探す」になります。
心の理論と予期せぬ移動課題の解説
心の理論は他者の心的状況を理解できる力を指します。
そしてこのためには誤信念の理解が必要です。
つまり「自分がこうだから相手もこう」ではなく、「相手はこういう状況だからこう思うだろう」という予想が必要です。
たとえその他者の判断が自分から見たら間違っていたとしても、「相手の状況を考え」その誤った判断を納得できる力が心の理論でもあります。
サリーとアン課題においてサリーはアンによってボールを予期せぬ移動にあいます。
これによってサリーはボールがない箱を開けるいう間違った行為を行います。
しかしサリーにとってその行為は間違っていたとしても仕方がない行為です。
なぜならボールの移動をサリーは知らないからです。
このように相手の立場に立って相手の判断を想像できるかが予期せぬ移動課題の本質です。
そしてこの問題設定の背景には心の理論に必要な誤信念の理解を見ると言う意図があります。
補足記事
参考資料
『心の理論の生涯発達における実行機能の役割』(心理学評論刊行会)2021年11月6日検索
『幼児版ストループ課題の作成』(公益社団法人 日本心理学会)2021年11月6日検索
『幼児における「心の理論」と実行機能の関連性 : ワーキングメモリと葛藤抑制を中心に』(一般社団法人 日本発達心理学会)2021年11月6日検索
『実行機能の初期発達,脳内機構およびその支援』(心理学評論刊行会)2021年11月6日検索