吃音を治す機械はあるのか?
吃音の症状軽減に効果を期待できる装置としては、吃音補助機械であるDAF(遅延聴覚フィードバック)とFAF(周波数変換フィードバック)などがあります。
しかしながら、吃音の症状を改善するために機械を使うことは、そこまで有意義とは言い難いでしょう。
参考の1つとして使ってみるぶんはいいでしょうが、「これがあれば吃音が治るんだ」と藁にもすがるような思いで用いることはおすすめできません。
この背景には機器が高額である点と、症状によって効果が限られる点、機械に依存する可能性がある心理的デメリットなどが挙げられます。
解説
機器が高額である
DAFとFAFを合わせて使う場合、その価格は50万円ほどします。
DAFとFAFは併用することができ、医学的研究ではむしろ併用した状態で検証することが多いです。
このように高額な機械ですが、装着感は快適なものとは言い難いです。
機械の性質上、背景音をうるさく感じたり、装用後に耳鳴りを感じる場合があります。
症状によって効果が限られる
DAFやFAFは、音の繰り返しなどの症状には効果が期待できますが、音が出てこないブロック(難発性吃音)には効果がありません。
自分の声が出なければ、そもそもフィードバックする音声が生成されないためです。
また、これらの機械を用いた場合、朗読場面では吃音が58%ほど軽減されましたが、会話では14%ほどしか軽減されなかったようです。
このように、他者とのコミュニケーションにおいて重要な会話場面で今一つ効果が得られない点がデメリットとしてあります。
心理的デメリット
本人の心理状態は吃音の症状に大きく影響します。
「どもってもいいんだ。自分の話したいように話そう」と吃音と折り合いをつけられることが、結果として吃音の重症化を防いでくれます。
このように考えると、「どもることはいけない・恥ずかしいこと。だから機械を使おう」という発想は、自分を追い詰め余計に吃音症状を重症化させるリスクもあります。
流暢に話せた1つの経験として使用するぶんはいいでしょうが、機械に依存してしまうような使い方は好ましくないと言えるでしょう。
DAF・FAFの解説
補足記事
参考資料
『吃音』(ICD-10)2018年7月15日検索
『吃音症の遺伝学』(日本小児耳鼻咽喉科学会)2021年11月20日検索