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サリーとアン課題をできないことと発達障害の関係
自閉症スペクトラム障害(ASD)といった発達障害の子は、しばしばサリーとアン課題のような誤信念課題を苦手とすることがあります。
しかしながら発達障害児のコミュニケーション面の困難さを、誤信念課題の傾向だけで説明することはできません。
このような学説が専門家の中での多数派となっている状況がうかがえます。
解説
サリーとアン課題の内容
サリーとアンが部屋で遊んでいます。
サリーはボールをカゴの中に入れて部屋を出ました。
サリーがいない間に、アンがボールを別の箱の中に移します。
サリーが戻ってきてボールを探すとき、どこを探すでしょう?
(答え:カゴを探す)
研究者によって登場人物の名前などは微妙に異なりますが、サリーとアン課題はおおむね上記のような内容です。
誤信念課題の解説
上記のようにサリーとアン課題は「○○さんは△△と思っている」という相手の視点に立った考えを問われます。
このような形式の課題を誤信念課題と言います。
誤信念課題は心の理論を見る典型的な課題です。
サリーとアン課題の通過年齢
定型発達においてサリーとアン課題はおおむね4~5歳頃に正答できると考えられています。
これに対し、自閉症スペクトラム障害の子は(知的に遅れがなくても)サリーとアン課題を上記年齢になっても正答できないケースが見られます。
もちろん自閉症スペクトラム障害児の全員が苦手というわけではありません。
心の理論と発達障害
このように、発達障害児は誤信念課題を苦手とする可能性があります。
一方で、発達障害児の心の理論欠如説はおおむね否定されています。
つまり、心の理論で発達障害児のコミュニケーション原理を全て説明することはできません。
発達障害児のコミュニケーションの特異性のあくまで1つでしかないということです。
参考資料
『嘘を求められる場面での幼児の反応 : 誤信念課題との比較から』(日本発達心理学会 J-STAGE)2020年9月7日検索
『自閉症児への「心の理論」指導研究に関する行動分析学的検討』( 心理学評論刊行会 J-STAGE)2020年9月7日検索
『心の理論の生涯発達における実行機能の役割』(心理学評論刊行会)2021年11月6日検索