吃音がある子に構音訓練はしたほうがいいのか?
音を意識させる内容上、構音訓練をしていると吃音症状が出て練習を続けるか迷うケースがあります。
しかしながら、
吃音と構音障害が合併している場合、中・長期的には吃音があっても構音訓練は実施することが望ましいです。
吃音があっても構音が改善することで、トータルとして発話の明瞭さが向上するからです。
解説
構音障害と吃音の予後
幼児期の発音の相談は、機能性構音障害に伴うものが多いです。
機能性構音障害を改善する場合は構音訓練が一般的で、治療法もおおむね確立されています。
一方で幼児期の「どもり」の相談はほぼ「発達性吃音」に分類されます。
こちらは治療が確立されておらず自然消失を除いて完治することは難しいです。
吃音が現代医学では根本的な治療法が確立されておらず、治すことは困難です。
構音訓練中の吃音症状
機能性構音障害における構音訓練は、標的となる音を意識しながら音の出し方を練習していきます。
一方で吃音は症状をなくすことは困難であり過度に吃音を意識させ過ぎない配慮が必要です。
構音障害は練習中に音を意識させ、吃音はどもることを気にしなくていいようにするという真逆の配慮を行うことになっていきます。
このような中で、構音訓練にて音を意識する過程で吃音が出ることがあります。
これにより、「どもって辛そうだから構音訓練はしないほうがいいのでは」と迷うケースが生じます。
吃音者への構音訓練
しかしながら、先ほど述べたように構音障害は訓練によって治る障害であり、吃音は訓練では治らない障害です。
構音障害も吃音もどちらもスムーズな会話の妨げとなります。
治る構音障害をしっかり治すことで、トータルとしてその人の会話の明瞭さは向上することが期待できます。
このため、中・長期的には吃音があっても構音訓練は行ったほうが望ましいです。
「中・長期的」と書いたのは、短期的には吃音の状況によって構音訓練を休む日があってもいいということです。
吃音の症状には(例えば学校が忙しい時期など)時期によって変動があるので、本人の状況を見ながら柔軟な構音訓練を行うことが望ましいでしょう。
補足記事
参考資料
『吃音』(ICD-10)2018年7月15日検索
『吃音症の遺伝学』(日本小児耳鼻咽喉科学会)2021年11月20日検索