発達障害児のZPD
発達障害児の療育の大変さ・難しさの1つに「発達の最近接領域」を見つけることの難しさがあるのではないかと考えます。
個人差はありますが、発達障害児には発達の凹凸、切り替えの難しさ、こだわり、質的なコミュニケーションの難しさなどが見られることが多いです。
こういった要素がその子のできることとできないことをわかりにくくしたり、他者の介入の仕方が難しい状況を作っていることがあるのではないかと思います。
発達の最近接領域を見つけることは教育全般において大切なことですが、発達障害児の療育ではそれが特に重要であり同時に難しいことではないかと考えます。
解説
発達の最近接領域(ZPD)とは?
発達の最近接領域とは、「その人にとって誰かのサポート(教えてもらう・手伝ってもらうなど)があればできる領域」のことです。
より平易に言うと発達の最近接領域とは、その子が「簡単にできること」と「難しすぎてできないこと」のちょうど境目にある活動とも考えられます。
心理学者であるヴィゴツキー(Vygotsky)が提唱した概念です。
「Zone of Proximal Development」の頭文字を取って「ZPD」と表現されることもあります。
教育や療育において「発達の最近接領域」という考えは非常に重要な概念の1つです。
療育における発達の最近接領域
発達の最近接領域が広いとは、「手伝ってもらえばできること」が多いということでもあると思います。
そしてそれは「手助けが多く必要」と捉えることもできますが、同時に「他者が介入できる事柄が多い」ということでもあると思います。
発達障害児の中には「自分一人でしたい」「難しいこと・興味のないことはまったくしない」といった様子が見られることがあります。
もちろん大なり小なりそういうことは誰しもありますが、発達障害児の場合は上記のようなことから集団行動が成立しないことがしばしばあります。
支援者からすると、仮に手伝いが必要であったとしても集団の場に参加できれば様々な経験を積んでもらうことができます。
しかし他者の介入を拒否する、介入するための指示が通らないなどの場合、集団の場に参加すること自体が難しくなります。
そういった子の場合、より活動を細かく見て環境設定や活動内容の検討が必要になります。
発達の凹凸・切り替えの難しさやこだわり・質的なコミュニケーションの難しさなどがあると、発達の最近接領域が狭くより活動内容をピンポイントで設定する支援者の腕が問われることになるのではないかと思います。