今日は小児発達学においてよく出てくる用語・概念である愛着理論についてです。
1. 愛着理論とは?
愛着理論とは平たく言うと、
「人の成長にとって愛情を注いでもらって愛着を感じなら生きることは大事だよね」という考え方のことです。
この「愛情を注いでくれる人」は一般には親とされますが、
愛情を注いでくれる人は必ずしも親でなくてもいい。けれどあまりに対象が多く一人当たりの愛情が薄いのはNG。
あくまでごく少人数の人が重点的に愛情を注いでくれるということが大切。
2. 「愛着理論」と「安全基地」
愛着理論は心理学者であるジョン・ボウルビィによって提唱されました。
その後、発達心理学者のメアリー・エインスワースにより愛着理論に関した用語として「安全基地」という概念が提唱されます。
この「愛着理論」とか「安全基地」という考え方は小児発達学などにおいてよく出てくる考え方です。
補足記事:ストレンジ・シチュエーションとは?~子供の愛着形成~
愛着理論
人は人に愛着を感じる中で、精神的に安定した言動をとりやすくなります。
愛着と感じることと誰かを信頼することは深く関連します。
例えば子供は生まれたばかりはお母さんにべったりです。
そうしなければ生きていけないからです。
けれどずっとそのままというわけにもいきません。
人はいつか、親元を離れて一人で生きていかなければなりません。
その練習として、
子供は親から一旦離れて一人で遊んだりお母さんが離れても取りみださないようにする必要があります。
このためには、
親が子供に愛情を注ぎ、子供が愛着を感じ、「親と一旦離れても、また親が自分のところに来てくれる」という信頼感が子供の心に形成されることが大切です。
安全基地
子供が親から少し離れて子供同士で遊ぶ。
子供同士でけんかする。
親に泣きついて、慰めてもらって、元気になる。
人は誰でもそうですが、帰る場所というものが必要です。
幼い子供なら特にそうです。
安心できる、帰る場所があってはじめて人は挑戦できます。
子供にとって、親が「安心できる場所」であり「何かあれば帰ってこれる場所」である。
それ故に子供は親から離れていろんなことに挑戦できる。
これが安全基地という考え方です。
3. 愛着理論の誤解
愛着理論についての誤解でありがちなものをいくつか。
実母でなくてもいい
先ほど少し触れましたが、愛着理論はあくまで子供に愛情を注ぎ、子供が愛着を形成していくことを大事にしましょうという考え方。
・子供に愛情を注ぐのは実の母親じゃないといけない
・幼い頃は保育園じゃなくて親が育てないといけない
といったのは間違いです。
例え実の親でなくても、特定の誰かが自分に無償の愛を注いでくれるという経験が必要なわけです。
親のせいではない
これも誤解されるのが、
・愛情を注げは必ず子供は愛着を感じる。
・子供の成長が遅いのは親の愛情不足。
と決めつけること。これも間違い。
例えば自閉症スペクトラム障害といった先天的に人との関わりの認識が苦手なお子さんもいます。
全てを親の接し方のせいにするのは筋違いです。
4. まとめ
愛着理論は平たく言うと「人の成長にとって愛情を注いでもらって愛着を感じなら生きることは大事だよね」という考え方。
こう聞くとすごく当たり前のように聞こえますね。
そう、当たり前のことなのです。
けれど、人は往々にして当たり前のことを忘れてしまうものですよね。
多忙な育児や子供の発達に関わる仕事をしていると、この「子供に理屈ではない愛情を注ぐ」という行為を忘れてしまいがちになることもあります。
子供にとって遊びも勉強も成長も、まずは愛着の上に成り立ちます。