人間の能力には計算の速さや知識の豊富さといった認知的な力と、
忍耐力や自制心、創造力といった数値化しにくい非認知的な力があります。
子供の教育において、学力を中心としたIQを鍛えるだけでは不十分です。
自制心や創意工夫する力、しつけや心の成長といった非認知力があってはじめて学力は活かされます。
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海外に非認知力を向上させる「心の道具」というカリキュラムがあります。
心の道具ではどんなことをしているのでしょう?
読み書きは代表的な学習の一つです。
読み書きには当然、文字が読める必要があります。
文字と音が結びつく必要があります。
文字を覚える際、似たような音を一緒に覚える方が効率が良いかもしれません。似たような音とは、発音のときに使う口の部分が似ているということです。
例えば「ぱぴぷぺぽ」や「ばびぶべぼ」、「まみむめも」はいずれも唇を一度閉じないと発音できない音です。
「たちつてと」は舌先を使います。「かきくけこ」は舌の奥を使います。
「パパ」「ママ」「ブーブー」。
似たような音の単語をイラストでひとまとまりにして、子供に見せてあげるとわかりやすいかもしれません。
例えば消防車ごっこ。
ただ消防士さんになるのではありません。
みんなで役割を詳細に決めます。
消防士、火を消してもらう人、電話のオペレーター、消防車の運転手。
夜勤の消防士と日勤の消防士を分けてもいいかもしれません。
笑っちゃうほどリアルにごっこ遊びをするのです。
子供たちにそれぞれやりたい役を自分で選んでもらいます。
「この役をしなさい」と強制してはいけません。
役割が決まったら、それぞれ役割の台本を決めます。
できるだけ詳細に選んだ役に扮している自分を絵に描いてもらいます。
文字が書けるなら、字も加えてよいでしょう。
このとき、大人は「こういうふうに描いて」と強制してはいけません。
もしも字が稚拙でも、ミミズがはったような字でもかまいません。
書こうとする姿勢が大切です。
台本ができあがったら、ごっこ遊びスタートです。
30分~1時間、たっぷりとごっこ遊びをします。
もしも場を乱したり、騒いだりする子がいたら、大人は単に怒るのではありません。「台本にそう書いてあったっけ?」と促します。
ごっこ遊び中、大人は指示したり何かを教えてはいけません。
あくまで場の進行を手助けするアシスタントに努めます。
片付けもなりきります。
例えば普段から片づけのときに流す音楽を決めておく。
習慣化すると、先生の「片づけて」の指示よりスムーズに片付けることができます。
例えば片づけを競争する。
片づけをゲームにしてしまうのも有効です。
子供同士向かい合って座ります。
一人は口の絵を服に貼ります。一方は耳の絵を服に貼ります。
口の絵の子供が本を読み聞かせます。
耳の絵の子供は黙って話を聞きます。
最後に耳の絵の子供が一言感想を言います。
口と耳の絵を貼り替えて、役割交代。
「相手が話しているときは黙って聞く」
当たり前のようですが、大人になってもなかなかできない人は多いですよね。
会話の役割交代をゲーム形式で学んでいきます。
「サイモン・セッズ」という海外の遊びがあります。
まず一人、「サイモン役」を決めます。
サイモン役の人は様々な指示を出し、他の人は従います。
サイモン役は指示を出す際、必ず「サイモンセッズ(サイモンの命令)○○」と言います。
例えば「サイモンセッズ、右手を挙げて」「サイモンセッズ、椅子に座って」
周りの人は、「サイモンセッズ」と言ったときの指示しか聞いてはいけません。単に「右手を挙げて」などの指示に従うと負けです。
日本語でやるなら、「船長さんの命令、○○」と言ってもいいでしょう。
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【参考文献】
ポー・ブロンソン、アシュリー・メリーマン『間違いだらけの子育て』インターシフト、2011年