構音の解説

「さしすせそ」(サ行)の発音練習(1)~サ行に必要な口腔運動~

公開日:2017年6月9日

子供の滑舌は自然に上達する場合が多いですが、
中には練習が必要なお子さんもいます。

発音の練習を専門用語で「構音訓練」と言ったりもします。

今回は日本語の音の中でも比較的難しい音であるサ行の音を見ていきましょう。

※「さしすせそ」の発音の仕組みを踏まえた上で話を進めるので、補足記事を参考の上ご覧ください。

補足記事:「さしすせそ」(サ行)の発音の仕方
 
 

 
 
 

サ行に必要な口腔運動

サ行の発音には舌先の微妙な動きが必要不可欠です。

そのためサ行の発音練習はまず舌先のコントロールから始まります。
 
 
 

サ行の音の解説と構音訓練

「さしすせそ」という音

「さしすせそ」、つまりサ行の音は、
音の出し方が「さすせそ」と「し」で若干異なります。
そのため「さすせそ」と「し」は分けて考えます。
 
 

「さすせそ」

「さしすせそ」は、
舌先を上の歯につけないように上げて、空気を細く出す音です。

例えば「た」という音と「さ」という音を発音してみてください。
「た」は舌が上の歯につきますが、「さ」はつきません。
サ行の発音にはこの舌先の微妙なコントロールが必要です。
 
 

練習にあたって

発音の練習にあたっては、以下のことが前提になります。

・口蓋裂などそもそも発音を阻害する疾患がない
 (あるいは手術済み)
・難聴がない(あるいは対処済み)
・発音の練習をする適齢期である(4歳以降)
・音の意識がしっかりついている
・サ行より簡単に出そうな音の練習が終わっている

サ行より簡単な音としては、例えばカ行などです。
発音はどれからしないといけないということはありませんが、その子自身が出しやすそうな音から取り組む方が良いでしょう。

補足記事:子供の発音は何歳まで様子を見て、何歳から練習させたほうがいいのか?

「音の意識がしっかりついている」ことも重要です。
以下をご参考ください。

補足記事:まずは音の意識をつけていこう
 
 

どの音から?

「さすせそ」のうち、どの音から練習しないといけないという決まりはありません。
その子自身が一番出しやすそうな音から始めてOKです。

特に出しやすそうな音がない場合は、
比較的とっつきやすい「す」から始めるのが無難でしょう。
 
 
 

具体的な手順

聞き取り

まずは聞き取り練習です。
練習する音を聞きとれないとそもそも発音練習はできません。

例えば「アイス」が「あいちゅ」、
つまり「す」が「ちゅ」になっているなら「す」と「ちゅ」を聞き分けることができるようになりましょう。

「『す』って言ったときだけ手を挙げてね」
など言って「す」と「ちゅ」を聞き分ける練習をします。
 
 

舌の運動

基礎練習として舌の運動をします。

舌をできだけ自然な形で唇より少し前に出します。
ほぼ唇と同じ位置でもOKです。

ポイントは出しすぎないこと。
舌が細くなりすぎたり上下左右に偏らないこと。
舌が平らになって、口角にもついていること。

上下の唇や歯で舌をはさんで無理やり形を作ってはいけません。
口は開けたまま。舌が触れるのは下唇だけです。

舌が、下唇の上にぽてんと乗っている感じです。
この状態を5秒以上維持できるようにします。

この状態を「舌が平らな状態」としましょう。

舌のコントロールが苦手なお子さんは、
「舌が平らな状態」ができなかったりできてもすぐに舌が動いて維持できません。
 
 

舌の運動(2)

「舌が平らな状態」が落ち着いてできるようになったら今度はストローを使います。

「舌が平らな状態」のまま、舌と上の歯でストローをくわえます。
ストローは口の真ん中で。左右に偏らないようにしましょう。

このときも唇を使ってはいけません。
唇は開けたまま。
舌と上の歯だけでストローを支えます。

やはりこれも5秒以上、安定してできるようになりましょう。
 
 

息を出す

「舌が平らな状態」でストローを支えることができるようになったら、今度は息を出します。

ストローから息を出しましょう。
ただし、舌や唇が動かないようにしましょう。

ストローを平らな舌と上の歯で支えた状態のまま、息を出します。
ありがちなのは、息を出そうとすると唇が閉じてストローに触れるパターンです。これはNG。
上の唇はストローに触れないようにして、息を出します。

唇を使うと「フーッ」という息が出ますが、
平らな舌と上の歯で作ると「スーッ」という音が出ます。
これは空気がこすれているのです。

この空気がこすれている感じがサ行の発音には重要です。

この空気がこすれる息の出し方を安定してできるように何度も練習しましょう。
 
 
 

まとめ

以上のように、
舌先のコントロールがサ行の発音練習の基礎になります。

発音練習というといきなり苦手な音を発音することから始めるイメージですが、実情は異なります。

急がば回れと言いますが、
基礎的な口腔運動をマスターするのがきれいな発音の近道です。

続きは次回に。

次の記事:「さしすせそ」(サ行)の発音練習(2)
 
 
 

その他の記事

「さしすせそ」(サ行)の発音練習(2)~「す」の音、単発の練習~

「さしすせそ」(サ行)の発音練習(3)~「す」の単語練習~

「さしすせそ」(サ行)の発音練習(4)~「す」の文章練習~

「さしすせそ」(サ行)の発音練習(5)~「さ」「せ」「そ」の練習~

「さしすせそ」(サ行)の発音練習(6)~「し」の練習~
 
 
 

参考資料

-構音の解説

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